公認心理師試験まで,あと7日。
「公認心理師試験設計表」大項目9,「感情及び人格」(出題割合2%)のキーワード,「類型論」「特性論」について勉強してみる。
類型論は,typological theoryの訳である。
typological・typologyは,typeから派生した語であろう。typeは,「強く打つこと」「押すこと」「印象」を意味するギリシア語から,「浅い浮き彫り」を意味するラテン語を経て,「しるし」意味する言葉として英語に入っている。このイメージからすると,typeという語は,「超越的な存在によって押された(性格という)しるし」「生得的に持っている型」といった意味を内在させているように思う。
「類型論」という訳語は,なんだかイメージを持ちづらい。「性格の型についての理論」とか「タイプ論」の方がまだ良いように思う。
typologicai theory(性格の型についての理論)は,当然ながら,古代から考えられてきた。「性格の型についての理論」が最も花開いたのが,20世紀前半,ドイツを中心としたヨーロッパである。その代表格が,エルンスト・クレッチマー(Ernst Kretschmer)の3気質(細長型-分裂気質・肥満型-躁うつ(循環)気質・闘士型-粘着気質)と,カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)の「タイプ論」(内向・外向/思考・感情・感覚・直感)である。
「類型論は,人間を独自の全体として考えそれより小さな部分に分けない。厳密に測定することでなく,直感的に理解できることを重視する」
「その結果,類型論は無体系であったり,分類方法に研究者の特殊性が反映し一般的といえず,少数の型に分けるためどちらの類型にも属さない中間の型が無視されやすく,互いの分類を統合するような分類は試みられないのである」(キーワードコレクション心理学改訂版,p.359)。
特性論は,traits theoryの訳である。
traitは,ラテン語tractusから,「引かれるもの」を意味する中期フランス語を経て,英語に入っている言葉。trainとかattractionなどと同じ根を持っている。遺伝や習慣・教育などによって「引き継がれてきたもの」とか,あるいは過去や経験を「引きずっているもの」といったイメージが可能だろうか。
特性論は,20世紀半ば以降のアメリカを中心に発展した。質問紙などによる客観的・数量的な測定と,因子分析(factor analysis)により因子を抽出する方法が特徴である。
また「特性論は個人の人格を複数の特性次元に沿ってそれぞれの程度を量的に表現するものである」(現任者講習会テキスト,p.252)。それ故,「traits」は複数形なのだろう。よって,訳としては「複数の特性によってパーソナリティを把握しようとする理論」が良いと思う。
「特性論においては,人の人格を包括的に理解するために,いくつのいかなる特性次元を設定すべきかということが重要な課題となる」「ここ四半世紀の間に最も理論的に注目され,また実証的にその妥当性が支持されているのは5因子モデルということになろう」(現任者講習会テキスト,p.252~253)。
「5因子モデル」の5つの因子は,外向性・協調性・誠実性・情緒的安定性・経験への開放性,である。
また近年,パーソナリティ全般ではなく,パーソナリティの特定の側面を把握しようとする研究が盛んになっている。その中に,反社会性・犯罪性を表すパーソナリティとして「ダークトライアド」(dark triad)がある。文字通り3つの因子(マキャべリアリズム・サイコパシー傾向・自己愛傾向)からなる。
「特性論(traits theory)は米・英の研究者が行った「人格」の分類をさすが,彼らは,人間は環境によって形成され他者や社会との関わりの中でさまざまな行動を表出するという立場から個人差を求めた。つまり根源的に変化するもののニュアンスを持つ(persona:仮面→personality)「人格」の分類こそが人間の変化・発展を重視するとくに米国の風土に合致しているのである」(キーワードコレクション心理学改訂版,p.360)。
「特性論は,人間を類型論のように質的に異なるものではなく,測定値のパターンの違いとしてとらえる。そのため類型論のように中間の型が無視されることはないが,直感的な理解ができにくい」(キーワードコレクション心理学改訂版,p.365)。
まあ,こんなところ。
「typological」と「traits」の観点から,DSM-Ⅳ→DSM-5の変化を見ても面白いかもしれない。DSM-Ⅳの方が,まだヨーロッパ的な精神病理学,「病理の型についての理論」の匂いが残っており,DSM-5では,「スペクトラム」や「ディメンショナルモデル」といった概念を用いて,よりアメリカンな「複数の特性によって病理を把握しようとする理論」へと移行しているように見える。
「typological」と「traits」,どちらが臨床的に有用だろうか?
【本日の勉強時間:2時間,「感情及び人格」勉強時間:2時間/2時間,累計勉強時間40時間/100時間】