月百姿展 | 地唄舞 吉村ゆかり 粋・はんなり日記

月百姿展




5月に月岡芳年「月百姿」展に行って参りました。

芳年が晩年、様々な月を通して描く「月百姿」の女性達が好きなのですが、展覧会を訪れるのは初めてのことでした。

今の時代に見てもお洒落な色柄、構図にただただ惹かれていたのですが、「月百姿」には実話に基づいた悲しい物語があることを知りました。

画像右の琵琶を手に泣いている女性の作品は、平安時代後期の公家である徳大寺実定に身分違いの恋をした琵琶の名手である17歳の有子が叶わぬ恋に絶望を覚え、海に身を投げてしまうというもの。水面に照り返る月の輝きが身を投げようと夜に一人で船に乗った有子の孤独感と悲しさを一層募らせているのを感じます。

画像左の有名な作品は朝野川晴雪月孝女ちか子。
無実の罪で投獄された銭屋喜太郎の娘ちか子がある雪の晩に父親の釈放を願って浅野川(朝野川)に身を投げたことを描いた作品です。父親はちか子の訴えによって釈放されるのですが、ちか子はこの時の無理が祟って若くして亡くなってしまいます。

月岡芳年の弟子である水野年方の作品が展示されていたことも嬉しかったです。水野年方の描く気品のある美しい作品に惹かれていました。

年方の展示作品の中で、三十六佳撰編笠茶屋 寛永頃婦人が印象に残りました。



編笠茶屋とは、江戸時代、遊廓に入る客に、顔を隠すための編笠を貸した茶屋のことで、

地唄舞にも編笠を被って遊廓を忍んで訪れる客を描いた振付が幾つかあるのですが(「由縁の月」「世界」)、

この編笠は所有物ではなく、実はレンタルだったのだということを知り、江戸時代から「レンタル編笠」などという効率的なシステムがあったことに親しみを覚えました。

その後、観に行った「大吉原展」に展示されていた吉原の地図に「編笠茶屋」を発見。物事って興味を持って見ていると全てが繋がっていることを感じた出来事でした。