遊女 朝妻
桜の季節になると思い出すのは遊女朝妻のことです。
キリシタン迫害の折り、キリシタンであった吉原の遊女「朝妻」は小石川の切支丹屋敷に幽閉されました。
改悛か打ち首かの二者選択を迫られた朝妻は、改悛を拒絶し、牢獄のそばの桜の木を見て、
「ただ一つお願いがございます、後45日で桜の花が咲くのであれば、桜の下で死にとうございます。」
と申し出ました。
その願いが叶えられ、45日後、朝妻は牢獄から満開の桜の下に据えられ、笑って刑を受けた、と伝えられています。
「妓朝妻なるものあり、罪死に当たる、獄辺の桜樹を指し、獄吏に語げて曰く、花に及んで死するを得ば恨みなしと、官之を憐れみ、花開くを待ちて刑す、後其樹を呼んで朝妻桜と為す…」
と記された石碑が中野区の蓮華寺境内に今も残されています。これは文化12年、小石川の切支丹屋敷に山荘(切支丹屋敷)の碑が建てられ、後に蓮花寺に移されたものだそうです。
遊女「朝妻」を描いたと言われている作品です。
松本華羊 「殉教(伴天連お春)」
ジャガタラお春を描いたものという説がありましたが、着物に「朝妻」の「妻」の字が描かれているため、朝妻を描いたのではないか、と言われています。
満開の桜の下、荒筵の上に座して手鎖をされ、憂いを含んだ瞳で桜を眺めています。着物の襟には十字架が描かれています。
まるで螺鈿を施したような輝きを放つ桜の花が美しく、そして哀しく目に映ります。
島成園「春の愁い」
この作品も「朝妻」を描いていると言われています。
ロザリオの代わりに帯締めのようなものを手に持っています。
虚ろな表情で桜が散りゆく様を眺めているのが印象的です。
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