「ママ、パパとおにーたんを迎えに行こよ。」とハルが俺の韓服の袖口を引っ張る。

「ウーン」と俺がしぶっていると……

ハルが「ハルちゃん、行ってくる。」と言って走り出した。

「ちょっと待ちなさい、ハル。」

俺の声に一瞬止まってクルッと俺の方を振り返ったけど、すぐにまた走り出してしまった。

「ハル、そんなに急いで走ると転ぶよ。待って、ママも行くから。」とハルに呼びかける。



シウォナとヒョクとドンヘが王様と世子の韓服を着た様に、俺もハルも今日は韓服を着ている。

俺は、薄いブルーを空に見立てて今年の干支(俺の干支でもあるけれど)であるの龍が銀糸で刺繍されていて、まるで龍が空を駆け登っている様なフュージョン系の韓服を着ている。

ハルは、王女様ということで白のチョゴリに金糸銀糸で花や蝶を刺繍して、チマは白のオーガンジーが下に穿いている薄いピンクのチマが透ける様になっていて、とっても可愛いチマチョゴリを着ている。

ハルはいつもは、スカートでもミニスカートで裾が短い物を穿いているから、今日のチマの様に裾が長いのは足が取らて転びそうで怖い。


「キュヒョンさん、あなた、走っちゃダメよ。あなたこそ、転ぶと危ないのよ。」とお義母様が気遣ってくださる。

「ありがとございます。俺、大丈夫です。ゆっくり行きます。それじゃ、シウォナ達を迎えに行って来ますね。」と言って大広間を出て玄関に向かう。



ハルが先に、大広間の玄関で、シウォナ達を待っている。


俺に気付くと「ママ、おにーたん。偉かったね。」と話かけてくる。

俺もそう思ったので「そうだね。」と言って、ハルと2人でバスを待つ。


俺達がそんな話をしていると、みんなを乗せたバスがもうすぐ到着するのか、駐車場の動きがあわただしくなってくる。



《宗廟大祭》の祭祀を終えた王族や首脳陣を乗せたバスが王宮の駐車場に着く。

その中にはもちろん、シウォナもヒョクもドンヘもいる。


バスの窓から、大広間の玄関にいる俺とハルの姿を見つけたヒョクとドンヘが手を振りながら

「ママだ!」

「ハルちゃんもいるよ!」

そう言ってシートベルトを外そうとする。


「おい、お前達、ちゃんとバスが停まってから降りろ!危ないだろ?」

「うん、わかってるけど、ママとハルちゃんが…」ヒョクが

「お迎えに来てくれているから早く行かないと…」ドンヘが


バスが停車位置に停まると、2人がパァーとシートベルトを外して、バスのドアギリギリまで降りてバスのドアが開くのを待っている。

そして、「早く、早く。」

「ドアを開けて、開けて!」

「早く、早く!」と2人で声を合わせて言っている。


2人の思いが通じたのかバスのドアが開く。

「ドンヘ、開いたよ。」

「うん、せーの!ヒョク、走るよ。」

階段を駆け降りる2人に、シウォナが後ろから「お前達、今日はいつものズボンじゃなくて韓服だぞ。上着の裾が長いんだから気を付けろよ。気を付けないと転ぶぞ!」叫んでいる。

「わかってるよ。」

「大丈夫だよ。」と言って後ろ手にシウォナにバイバイと手を振っている。



2人が一直線に手を振りながら俺達の所に走って来る。


「マァマァ~~!」

「ハルちゃぁ~~ん!」