「それにしても、ヒニムがいる時でよかったですね。」
「そうなのよ。本当にそう思うわ。」
「ヒニムが大切に飼っていた猫ですものね。」
「そうよ、先週も先々週も香港だったのよ。」
「お義母様、よくスケジュールご存知なんですね。俺は、先々週の『TIMA』のイベントは知っていましたけど。」
「僕達も見たよ。」
「カッコよかったよね。ヒョクお兄ちゃんの服スカートみたいでカッコイイ。」
「ドンへお兄ちゃんも途中で服脱いじゃった。」
「ハルちゃんも見た。」
「ヒョナも。」
俺とお義母様の話を聞いていた子供達が『TIMA』の話で盛り上がっている。
さすがに夜遅かったので翌日YouTubeに上がっていたのを子供達と一緒に見た。
その時の様子を言っている。
ウォンも自分も見たということを言いたかったのか両手を握って上下に振っている。
「バアバももちろん見たわよ。翌週は83zで行っていたのよ。」
83z の話が出たものだから、ヒョクとドンへが「ヤクソク」と歌いながら右手を上に振り上げるフリ付けをして83zの『Promise』を歌っている。
この曲は、本当にイイ歌だ。
そして、MVがサイコーにイイ。
いろいろあった2人が2人だけで出ているMV 。
ギュペンの俺だけど泣きそうになった。
「いい歌ですね。」
ヒョクとドンへが歌っている姿を見ながらお義母様に……
「ホント、いい歌よね。」
いつの間にか、ハルとヒョナも『ヤクソク』と言ってヒョクやドンへ達と一緒に手を上げて歌っている。
「キュヒョンさん、私ね、思うんだけどヒボムは、ヒチョルが香港から帰って来るのを待って旅立ったんじゃないのかって。」
俺は、ハッとした。
確か、イェソンさんの所のメロもイェソンさんの帰りを待って旅立った。
「去年の10月、スバショ10で南米でのツアーを終えて、その前からイェソンが飼っていたメロっていう犬が体調を崩していたんだけど、イェソンが帰って来るのを待って天に召されたって。」
「お義母様、俺も今その話を思い出しました。」
「きっと、この子達も自分を愛してくれた人に最後のご挨拶をしたかったんだろうね。」
ヒボムとメロのことをおっしゃっている。
俺は、お義母様の言葉に“うん、うん"と頷きながら「ヒニム大丈夫ですかね?」
「大丈夫なハズないじゃない。だから、『泣いてない』って言いながら大泣きしてたじゃない。」
そうだよな、大丈夫なわけないよな。
きっと、ヒボムには、楽しこと、辛かったことを話していたんだろうな。
ヒニムは、破天荒なイメージがあるけれど、本当は誰より繊細で恥ずかしがり屋さんだから。
ヒボムにしか本当の姿を見せてなかったかもしれない。
そんなヒボムがいなくなって、ヒニム、本当に大丈夫かな?
「でもね、キュヒョンさん、コレ見て。」
そうおっしゃってスマホを俺に見せてくださった。
白地に竹と月と猫が描かれている。

「これって……」
「そうよ、ヒチョルが『孤独男』で着ている韓服よ。」
確か、トゥギさんに「正月みたいだなぁ。」って言われていた。
「ここに描かれている猫は、もちろん…」
「ヒボム。」
「そう、ヒボムよ。」
もしかしたら、ヒニムは、こうなることを予想してヒボムをモデルにした猫を描いたデザインで韓服を作ったのか?
「キュヒョンさん、私ね。もしかしたら、ヒチョルは、そう遠くない将来、可愛がっているヒボムが自分の元から遠い所、ヒチョルが言っていた『猫の星』に帰って行ってしまうかもしれないと思っていたんじゃないかしら。だから、その時に一緒には居られないかもしれないけど、こうして絵として残してあげるといつまでもみんなの心に残るしね。それにヒボムは元々ELF からのプレゼントだったらしいじゃない。それと、これが私が思う一番の理由、こうして衣装にしていると、ヒボムと一緒にいるって思えるんじゃないかしら、一緒にステージに立っているって、『孤独男』ってヒチョルのソロじゃない。きっと、ドキドキしていたと思うの。スバショ10でステージに戻って来たものの、まだ一人でステージに立つのは相当プレッシャーがあったハズよ。でも、ヒボムが描かれた韓服を着てステージに立つと、"自分一人じゃないヒボムと一緒だ"って思って少しはそのプレッシャーから解放されたんじゃないのかしら。そう思わない?キュヒョンさん。」

俺は思わず首を振りながら「そう思います。」
「でも、ヒチョルの誤算はヒボムの旅立ちが意外に早かったことよ。もう少し後だと思っていたと思うのよ。」
「来週、9月10日が誕生日で二十歳になるって…」
「そうなのよ。残念よね。」