取り敢えず、次の100均へ

家に帰る道だと先に「T∧ISO」が来る。

ここは、日用品が多いっていう評判だからあると思うんだけど。

検索していたら、注意事項が書いてあったよな。

100ウォンだと思っていたら、300ウォンや500ウォン、1000ウォンだったりするから買う時は値札チェックを忘れずにって書いてあったよな。

今の俺には、100ウォンだろうが500ウォンだろうが1000ウォンでも雑巾があればいい。

それだけなんだけどな。


駐車場に車を止めて、さっきの「SERORI 」では俺の車が入ると同時に車が出て行った。

そいつに最後の雑巾を買われてしまったわけだけど、今度は誰の姿も見ていない。

これだったら大丈夫だな。

よし、店に行ってみよう。


この店は自動ドアではなくて、ドアの「PULL」と書かれた所を引っ張って中に入ろうとすると、ちょうど貼り紙を手に持ったイケメン店員さんがドアの前に立っていて、俺と顔を見合わせる形になる。


ちょうどいいや、ここで雑巾のことを聞こう。

「すみません、雑巾ありますか?」


「お客様も、雑巾ですか?」

「えっ、お客様もってことは、俺以外にも、雑巾を買いに来た人がいるんですか?」

「はい、いらっしゃいました。」

「それで、雑巾ありますか?」と俺がもう一度イケメン店員さんに聞いてみる。


店員さんが無言で持っていた貼り紙を俺に見せる。


そこには


いつも「T∧ISO」をお引き立ていただきまして

ありがとうございます。

誠に申し訳ございませんが、雑巾は現在品切れ中です。

再入荷の予定はたっておりせん。

お客様にはご不便をおかけして申し訳ございません。

これからも「T∧ISO」をよろしくお願いいたします。



と書かれている。

「えっ、ここも売り切れなんですか?」


「はい、申し訳ございません。なぜだか、急に」申し訳なさそうに店員さんが頭を下げる。


「もし宜しければ、お客様が雑巾を必要な理由をお教え願えないでしょうか?今年は、当店も在庫不足でお客様にご不便をおかけしております。その理由がわかれば、今後の参考にさせていただきたく思います。」


なんだ、店長みたいな物言いだな


「おたくは?」

「一応、この店の店長をさせていただいております。」


ふーん、やっぱりな


「それは、学校の入学式や始業式で、学校から " 雑巾を2枚持って来てください。" って言われているからだと思いますよ。父兄が子供のために必要だからです。俺だって、そのためにこちらの店舗だけではなくて、他のお店も回ってみたけれど、売り切れでした。」


俺も、ヒョクやドンヘのために頑張っている。



「そうですか?そんなことがあったんですね。」

「はい。」


「だったら、来年から、うちの店舗は仕入れ量を増やします。」


来年って、そんな悠長なことを言わないでよ。

今すぐ欲しいんだよ💢


「来年なんですもんね。今年は無理なんですもんね。」

「はい、申し訳ございません。」


わかってないな💥

「じゃあ、失礼します。」


あぁ、やっぱり、ここもか。

みんな、自分で雑巾作れよな。

自分のことは棚にあげて、俺はそう思ってしまった。


もう、あそこしかない最後の砦「TーCON⭐DO」だ。


車に戻って出発しようとしていると、さっきの店長さんがやって来て俺の車の窓をノックする。


窓を下ろして「どうしたんですか?もしかしたら、バックヤードに雑巾ありました?」と希望的観測を込めて言ってみる。


「いえ、さすがにそれはないです。もうすぐお帰りですか?」

「往生際が悪いと思われるかもしれませんが、もう一件100均に寄って行こうと思って…」

「ちなみにどこの?」

「言いにくいですけど、王宮近くの《TーCON⭐DO》に。」

「そうですか、実は、僕もあそこの《TーCON⭐DO》さんならあるかもと思って、言いに来たんです。」

「そうなんですか?でも、よく他店舗なのに、どうしてですか?」

「実は、あそこは、王宮に近いこともあって、なかなか一般人は行かないんです。」

「えっ、そうなんですか?でも、一体どうして?」

「それは、セキュリティーが厳しいからなんです。」

「そんな、100均で、失礼。すみません。でも、100均でしょう。」

「だからです。不特定多数の人間が出入りしますよね。」

「でも、それはコンビニも同じでしょ?」

「一般的にコンビニは取り扱っている商品が食料品が多いですが、うちの様に俗にいう100均は、食料品も取り扱ってはおりますが、圧倒的に雑貨が多いです。」

「でも、雑貨も同じだと思うけど。」

「その雑貨で、テロに必要な物が手に入ったりするから、警察官の立ち入りが頻繁に行われているんです。店内巡視があったり」

「結構、面倒臭いお店ですね。」

「だから、一般人は行かないかと思いまして。」

「そうか、逆転の発想だ。面倒臭いから人が敬遠するから俺が欲しい雑巾があるかもですね。」

「そうです。」

「うわぁ、いいこと教えていただいてありがとうございます。なんか、嬉しいな。」

「良かったです。お役に立てて。」

「じゃあ、早速行ってみますね。」

「はい、いってらっしゃいませ、王妃様。」と言ってイケメン店長さんが俺に深々とお辞儀をしてくれる。


「えっ!」


バレてる


 " どうして?"という顔の俺に、店長さんが

「先にお寄りになった《SERORI 》さんの店長さんから、" もしかしたら、王妃様がお立ち寄りになられるかも。" とて連絡がありました。系列は違いますが大事な事は情報共有するように日頃からしておりますものなので……」

「だから、さっきの貼り紙。という事は、《TーCON⭐DO》にも俺が行くという情報が……」

「はい、僕が連絡することになります。」

「じゃあ、すぐに行きます。出来れば、その雑巾確保してもらえるとありがたいけど…」

「さすがに、それは無理だと思いますが…」

「そうですよね。俺が悪かったです。他の人も欲しいですものね。とにかく行ってみます。ありがとう。 」


そう言って、俺は、ウインカーを出して駐車場から道路に出る。


イケメン店長が道路に出て、俺の車を誘導して俺が合流しやすい様にしてくれる。


上手く合流出来た俺は、店長にお辞儀をして《TーCON⭐DO》に急ぐ。


今度こそ、愛しの雑巾ちゃんとご対面出来るかなぁ

その予感しかないけど


Let's GO だ❗