「もう、ご質問はございませんか?」

先生がもう一度、子供達、保護者の顔を見渡す。

「ないようでしたら、以上で本日の説明を終わります。」

「お帰りの際は、教科書の入った白い袋と教材が入った赤い袋、調査書類や時間割が入った封筒を忘れずに持って帰ってくださいね。お願いします。」



先生の説明は小一時間はあったのかな。

子供達は自分の席に座っていたので平気みたいだけど、ずっと立ったままの親の足は痺れているというか、固まっているというかなかなか最初の1歩が出ない。


大人の俺達がそうなのだから、途中で泣いて俺が抱っこしているハルは別として、親と一緒に来た弟や妹は、ずっと立ってなんかはいられないし、注意力もそんなに続かない。

だから、兄弟と一緒に座らせたのかな?

座ることで体力の消耗を防ぐことが出来るし、白い袋や赤い袋の中身を見せたり、名札をクラス章に替えるパフォーマンスをすることで注意力や集中力を途切れさせない工夫というか、機転を利かせてくれたのかもしれない。

とにかく、ハルが暴れた位でそんなに収集がつかない事態も起こらなかったから、よしとしよう。


親達が子供達の席に行って荷物を持って帰って行く。

子供達もちゃんと「先生、さようなら。」と言って帰って行く。


俺達もヒョクとドンヘの所に行く。



ハルが「ママ、降ろして。」と言ってるので床に降ろす。


ちょっと、嫌な予感がしたけれど、まさか……と思ったら案の定



他の生徒と" さよなら " の挨拶をしているイ・ソジン先生の所にツカツカと歩いて行く。


俺は、あぁ~~!ヤバイって思ったけど、時既に遅し。


「チェンチェイ、ハルちゃん、お勉強ちて、学校に来るからね。」って言いに行っている。


先生も所詮2歳児の戯言に本気になるわけもなく「はい、待っていますよ。」とにこやかに返事をしてくださっている。


俺は思わず「ハル、いい加減にしなさい。」って怒ってしまう。


「いいじゃないの、キュヒョンさん、ハルが勉強するって言ってるんだから。ハル、バアバが勉強教えてあげるからね。」

「うん、ハルちゃん、頑張ってお勉強する。」


お義母様まで出て来た。

ここは、変に逆らっても余計にややこしくなるだけだから、2人を無視してヒョクとドンヘの席にシウォナと一緒に荷物を取りに行く。



つもりにしていたのに、横を見るとシウォナがいない。


どこにいるのかと振り返ると、若いママ達から写真をお願いされている。


あぁ~~!

ったく、また、いつものが……

このあと100均に行って雑巾をゲットしなきゃなんないんだよ。

時間がないんだよ。

どうせ「"王様、写真、お願いしますゥ⤴️"って言われちゃってから、断れないじゃないか。国民からのお願いだからな。」って変な言い訳するんだよな。

俺はわざと大きな咳払いをして、シウォナにプレッシャーをかける。

それでも、やって来ないからハルに「パパ、呼んで来て。」と言ってシウォナの所に向かわせる。


ハルが「パパ、来て。ママが怒ってるよ。」と余計な一言を言ってシウォナを連れて来る。


俺は、またしても天を仰ぐことになるけれど、100均に行って雑巾をゲットするという次のスケジュールが決まっている以上、俺のメンツはこの際どうでもいい。

荷物を持って先生にご挨拶をしてこの場所をあとにすること、それさえ出来ればそれでいい。