子供達が順番に教科書を前にもらいに行く。

ドンヘとハルの様に、弟や妹が一緒に椅子に座っていた生徒は、これまた同じように一緒に教科書をもらいに行く。

そして、同じように弟や妹と一緒に持って来ようとするけれど、結局はお兄ちゃんやお姉ちゃんが一人で白い袋を運ぶことになる。



どの子も袋から教科書を取り出して、パラパラと捲ってはまた次の教科書を取り出して、そしてまたパラパラと捲っている。


「はい、次は教材を配ります。」


「キョウザイ?」

子供達が" ナニソレ?" という風に先生を見ている。


イ・ソジン先生が今度は赤い袋を持って、それを教卓に置いて中に入っている物を子供達に見せる。

「時計、オハジキ、棒(赤・青・黄・緑・オレンジの10cm位のプラスチックで出来た直径2mm位の棒が各10本ほど半透明の柔らかいビニールの容器に入っている)、そろばん(普通のそろばんではなくて、これも5色で横に10個同じ色が並んでいる)。お道具箱。」

「お道具箱の中には、ハサミ、のり、差し(30cm)が入っています。」

「水彩絵の具セット、12色の絵の具とパレット、絵筆が細い筆2本、太い筆2本、水入れ、画板。」


先生が袋から中身を取り出す度に子供達から歓声が起こる。

そして、親達からはため息が漏れる。


なぜ親達と子供達の反応がこんなにも違いがあるのか。

それは、子供達がこれを使って何をするのかワクワクしているから歓声が起こり、親達は「これが、先輩の親が嘆いていた、持ち物に全部名前を書かなきゃいけない物達だ。オハジキや棒なんて地獄だなぁ。」って思っているから、その違いが態度に出ている。


「事前に申し込みをされた方には、名前シールが入っています。」


俺も、もちろん申し込みをしている。

でも、家に帰ったらシールを貼る作業が待っている。


「それから、明日、掃除用に雑巾一人2枚を縫って来て下さい。」


" えっ、雑巾って。俺、そんなの聞いてないよ。一人2枚って、ウチ4枚、えぇ~~!俺、そんなの縫えないよぉー!"

" 名前シールを貼る作業もあるのに、雑巾4枚って。それも明日までって。絶対にシウォナにはシール貼ってもらおう。お義母様にも手伝ってもらおう。俺一人じゃ絶対に無理だからね。"


「それから、この袋には、時間割と家族調査票が入っています。何かの時に学校に連絡される事があるかもしれませんので、学校としても、ご家族の連絡先を登録させていただきます。なぜ登録させていただくかと申しますと、父兄を名乗って学校に電話をかけて来て、そのまま連れ出すといった事例が他校で頻発しております。ですから、お父さん、お母さんはもちろん、おじいさん、おばあさんの携帯番号もご記入願います。」

「家庭訪問用の地図もよろしくお願いします。これも明日までです。」


" えぇ~~!そんなぁ~。これも明日まで!俺、今夜は徹夜かもしれない。やること山積みじゃないか~~!助けてくれ~~!"