「それでは、まずみんなが楽しみにしている教科書を配りたいと思います。」
「えっ、楽しみにしていないよ。」
「お勉強やだな。」
「わぁー、教科書、嬉しいぃ~!」
口々に生徒達が言っている。
パンパンと手を叩いて「はい、みんな静かにして下さい。」そう先生がおっしゃっる。
まあ、俺もそうだったけど、一人がしゃべるとなぜか他の奴がしゃべってなかなか収集がつかなくなる。
「それじゃ、名前を呼びますからみんなには、ここまで取りに来てもらおうと思いますが、みんな取りにこれますか?」
「は~い!」
「重いけど大丈夫?」
「大丈夫~!」
先生の質問に元気よく答えている。
「それでは、アン・テヒョク君。」
「はい。」と言ってヒチョル副首相の甥っ子が元気よく手を挙げて前に出て行く。
先生が黒板の下に置いている白い袋の山の中から一つを取って、テヒョクの名前が書かれた袋と手元の表とテヒョクの名札をチェックして、白い袋をテヒョクに手渡してくれる。
袋には持ち手が付いていて、それをテヒョクが持ってみるが、やはり子供には重いみたいで結局その袋を抱えて持つことになる。
そして、「ヨイショット!」と言って机に教科書が入った袋を置く。
その様子を俺達と同じように教室に入っていたヒチョル副首相が一生懸命にスマホで撮影している。
それを見て" 俺もヒョクとドンヘの時に撮らなくちゃ。それにしてもヒチョル副首相、叔父バカというかよっぽど甥っ子が可愛いんだな。結婚して自分の子供が出来たら大変だ。親バカ間違いなしだ。" と思っていると先生が「イ・ヒョクチェ君。」とヒョクの名前を呼ぶ声がする。
「は~い~!」とヒョクが大きな声で返事をして、前に出て行く。
そして、先生の前でお辞儀をして先生から白い袋を手渡してくれるのを待っている。
先生がテヒョクの時と同じように袋の名前と手元の表とヒョクの名札を確認している。
確認後、ヒョクに袋を渡してくれるけれどもやっぱり重くてヒョクも抱えるように袋を持って、そして、同じように「ヨイショット!」と掛け声をかけて机の上に教科書の入った袋を置く。
「 イ・ドンヘ君。」
「はぁ~い!」とドンヘが返事をすると、なぜかハルまで手を挙げて「はいッ!」と返事をして、これまたドンヘと一緒に前に行こうとしている。
俺は思わず「ハル、ダメだよ。」と言ってしまう。
そんな俺の言葉に一瞬ハルが動きを止めるけど
「いいよ、ハルちゃん、僕と一緒に、おいで。」とドンヘが言う。
" おい、なに勝手なことを言ってるんだ。" と俺が思ったけれど
先生が「妹?」とドンヘとハルに聞いてくださる。
2人共コックリと頷て
「はい、そうです。」
「ハルちゃん、ドンヘお兄ちゃん。」と2人が答えている。
その間、テヒョクとヒョクが袋から教科書を出している。
その様子をまだ名前を呼ばれていない生徒が、横から後ろから羨ましいそうに机から身を乗り出して見ている。
前の2人の時と同じように名前チェックをして
「じゃあ、2人で持ってみる?」と先生が2人に聞いてくださる。
「はい、持ちます。ハルちゃん、一緒に持とうね。」
「うん、ハルちゃん持つゥ~。」
先生が持ち手を2人に片方ずつ持たせてくれる。
ドスンッ!と大きな音がして袋が床に落ちる。
「重たい。」
ハルが持ち手から手を放してしまっている。
" あぁ~あ!だから、言わんこっちゃない。ハルには無理なんだから。"
ドンヘが「ハルちゃん、ケガしていない?」
「うん、ハルちゃん平気。」
" 何が平気だよ。もし、袋が足にでも落ちたら骨が折れたかもしれないんだからね。"
「大丈夫かな?ケガしていない?」と先生もハルに聞いてくださる。
「うん、ハルちゃん、オケガしていないよ。」とハルが大きな声で答えている。
「どうしよう?ハルちゃんには重いみたいだから、僕が一人で持つけど大丈夫?」
「うん、お兄ちゃん。ありがとう。」
「ヨイショット」ドンヘが袋を抱えて机まで持って行く。
「お兄ちゃん、頑張って!」とハルが応援している。
無事にドンヘも教科書を机まで運び終わった。