結局俺達家族は、教室の後ろの入り口から中に入って行った。

そんなに、最初に入った訳でもないけれど真ん中を陣取る事が出来た。


改めて教室の中を見てみる。


前の黒板にはチョークで大きな🌈が描かれていて、その🌈上を踊る様にに子供達の名前が一人ずつ書かれた紙が貼られている。

名前の前には写真が付いている。

こんな写真どこで手に入れたんだろう?

写真を持って来るようになんて言われていないけど……


壁には色紙で作った輪っかを繋いで作ったモールが張り巡らされていて、とっても可愛い。


ふと、俺の前に座っている子の机を見ると

「キム・ジェウク」と名前が貼ってある。

そして、その名前の前には、黒板に描かれた🌈の上に貼り付けて名前の前の写真と同じ写真が貼ってある。

ここにも?



「皆さん、こんにちは。」イ・ソジン先生が子供達に挨拶をする。

子供達も「こんにちは。」と元気よく挨拶を返している。


「私が、1年虹組🌈の担任のイ・ソジンです。今年1年皆さんの担任を受け持つことになりました。よろしくお願いします。」

「お願いします。」と子供達も返事する。



「あっ、ヒョクお兄ちゃん、ドンヘお兄ちゃん。」

今まで大人しくしていたハルが、2人の机(席)に走り出す。

えっ、えぇ~!

俺はあまりのことにビックリして「ハル、ちょっと待ちなさい。」と追いかけたけれども間に合わず、ヒョクの所に行って、ちょこんとヒョクと一緒にヒョクの椅子に座ってしまった。

すると、同じように親と来ている弟妹が、兄姉の生徒の元に走り出した。

そして、同じようにちょこんと兄姉と一緒に兄姉の椅子に座っている。


どこの親も慌ててしまっている。



その様子を見て「お兄ちゃんやお姉ちゃんと一緒に座れて良かったね。」とイ・ソジン先生が優しくおっしゃってくださる。

「はい!」とハルも含めてどの弟妹も嬉しそうな顔をして返事をしている。

もちろん、ヒョク達兄姉もニコニコと弟や妹が来てくれた事が嬉しくて笑顔だ。

あっ、一人だけ悲しげな顔をした子供がいる、ドンヘだ。

でも、ヒョクがハルに何か耳打ちをして、ハルがドンヘの元に行く。

これでやっと、ドンヘも笑顔になる。


「お父さん、お母さん。このまま始めます。この方が子供達も安心みたいなので。先程、この教室に入られて、黒板に名前と共に写真が貼られているのを見て驚かれたと思います。写真なんて渡していないのにと思われたことだと思います。この写真は先程の入学式の始まる前に、子供達だけ係員に連れていかれた時に撮った物です。2枚撮りました。1枚は机の上の写真です。もう1枚はこの黒板に貼っている分です。なぜ、机に顔と名前を貼っているかと申しますと、それは、我が国ならではの特殊事情のためです。」


特殊事情ってなんだ?


「それは、我が国は同姓同名が非常に多い。幸いと申しますか、このクラスにはおりませんが同姓同名の生徒がいるクラスもあります。その場合名前だけだと間違いの元になってしまいます。そして、その生徒だけが写真を撮るのもおかしなものですし、特に新入生の場合はまだ字が読めない生徒もいますのでそのためにも生徒の写真が必要となっています。だったらなぜ2枚?と思われたと思います。すみません、後ろを振り返っていただけますでしょうか。」


先生の言葉通りにふりかえると、そこにはロッカーがある。


「今は何も入っていませんが、絵の具や画板、机の中に入らない物を入れるロッカーも一人ずつありますので、自分のロッカーだとわかり易くするためと同姓同名の間違い防止のためです。」


そうだ、確かに同姓同名が他の国と比べたらはるかに多い。

それによるトラブルも絶対にある。

特に、こんな子供達の場合はそれを未然に防げるのであれば、この方法は有効だと思う。


「帰りに、この黒板の名札渡しますので、先生が丸々君はここに、丸々さんはここにと場所を指定しますので、みんな自分の名札を貼ってくれますか?」


「はい、出来ます。」と大きな声で元気よく返事をしている。