「以上をもちまして、2024年度大空小学校入学式を終了させていただきます。皆様、盛大な拍手をお願いいたします。」

その言葉通りに場内から拍手が起きる。



「新入生の皆さんは、各自自分の教室へ」

新入生達が立ち上がる。




俺はてっきりそのまま担任の先生に引率されて生徒達は、舞台袖にはけるものだと思っていた。



でも、違った。


ジョンス首相がいろいろ言っている間に、舞台中央に韓国の春を代表するケナリを巻き付けたアーチが出現していて、舞台から降りる階段も設置されている。

そして、階段の下には6☀️の名札を付けた生徒が待機している。


「さぁ、ご父兄の皆様、お子様達が舞台を降りて皆様の所を通って参ります、手拍子で送ってあげてください。そして、お近くを通ることがございます。その時はシャッターチャンスでございます、ぜひお写真をお撮り下さい。」


イ・ヨンエ先生が☀️の旗を持ってケナリのアーチを通って舞台下に降りて来る。

その後を、太陽組☀️の生徒が続く。

紺色の制服にケナリの黄色のコントラストがとってもキレイだ。


降りて来る生徒を階段下で待機している6年生が迎えに行って手を繋ぐ。

手を繋いでもらった生徒は、6年生に連れられて場内を練り歩く。

場内の通路をくまなく練り歩くため、一度は自分の子供が近くを通る、その時がそれぞれの親のシャッターチャンスである。



手拍子が場内に響く。


その様子をいつの間にか場内を飛んでいたドローンが撮っている。



☀️🌙⭐☁️の生徒が練り歩いて、次はやっと虹組🌈の番だ。


俺もシウォナもお義父様達もスマホを構えて準備万端だ。

ハルも席から立ち上がって手拍子をしている。


イ・ソジン先生が🌈の旗を持ってケナリのアーチをくぐって下に降りて来た。

その後にヒョクとドンヘとテヒョクが続いている。



「ヒチョル副首相!」


さっきまで来賓席に座っていたヒチョル副首相がスマホに写り込んでいる。

ほぼ正面の一番いい場所で甥っ子を必死で撮影している。


2人が階段を降りて来た。


そこまでは、俺もしっかり撮っていた。

でも、俺の目の前を通っている時は撮るのを止めた。

しっかり、目で見たいと思った。


俺の前をニコニコ笑いながら手を振って歩いて行く2人を、スマホを通してではなくて自分の目で見たいと思った。


ハルが「ヒョクお兄ちゃん、ドンヘお兄ちゃん、テヒョクお兄ちゃん。」と3人の名前を呼びながら一生懸命に手を振っている。


その光景を見ていると、涙が溢れて来た。

俺も泣きながら2人に手を振った。

ママも俺と同じように泣いていた。



姉さん、見ていますか?

あなたの大切なヒョクとドンヘの姿を



ふと、風が吹いた気がした




そして


キュヒョナ、ありがとう

2人をこんなに立派に育ててくれて



「姉さん…」

俺は天井を見上げた。


そんな俺の様子を見て「ママ、どうしたの?」とハルが不思議そうな顔をして見上げている。


「ううん、何でもないよ。ママと一緒にお兄ちゃん達に手を振ろう。」

「うん!」

俺もハルも精一杯手を振った。