そう言ってジョンス首相が緞帳の中に隠れてしまう。
一瞬場内が暗くなる。
ドラムロールの音がして、真っ赤に真っ白なペガサスが織られた緞帳にピンスポットが当たって、その光の輪がくるくる回って左右に散った。
そして、緞帳がゆっくり上がって行く。
ステージの上には新1年生全員が各クラス毎に椅子に座っている。
各クラスの前には🌞🌙⭐☁️🌈の旗が先頭に立てられていて、父兄が我が子を探し易くなっている。
椅子を左右にずらしてくれているので、前の子の頭と被って顔が見えないということがない。
俺も、ヒョクとドンヘをすぐに見つけることが出来た。
でも、これは多分若干の忖度があるのか2人もテヒョクも最前列に座っていたからなんだけど。
すぐにハルが2人を見つけて「お兄ちゃん!」と言って指をさして俺に教えてくれる。
俺は「ハル、ありがとう。教えてくれて。お兄ちゃん達これから入学式だから、ちょっとだけ静かに出来るかな?」と小声でハルに耳打ちをする。
「ハルちゃん、静かに出来るよ。」とこれまた小声で俺に返事をしてくれる。
「ありがとう。」そう言って俺はハルの手を握った。
再びジョンス首相がにこやかに登場
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ご父兄の皆様、ご入学おめでとうございます。ただいまより2024年度大空小学校入学式を開催させていただきます。先ずは、大空小学校ユ・ヒヨル校長、また、本来ならば王様であらせられるチェ・シウォン国王陛下のご臨席を賜るはずではございますがご多忙のため、代理ではございますがキム・ヒチョル副首相のご臨席を賜りましたことをご報告させていただきます。」
毎年、シウォナは王様としてこの小学校の入学式には参列していた。
今年はどうするのか、俺としては心配していた。
シウォナが出した結論は、王様というより一人の父親としてこの入学式に出席する方を選んだ。
王様よりも父親優先だ。
それでか、さっき俺がヒチョル副首相にこの最前列の席をすすめた時「用事がある。」って言っていたけど、これだったんだ。
本来ならば、ジョンス首相の方が相応しくのかもしれないけど、ジョンス首相は司会病だからヒチョル副首相にこの大役が回って来たもかもしれないけどね
ハルが「パパ、ここにいるのにね。」って俺に教えてくれる。
俺も「そうだね。パパ、忙しくないのにね。」と父親のシウォナを強調する。
「それでは、ユ・ヒヨル校長、キム・ヒチョル副首相にご登場願います。皆様盛大な拍手でお出迎えお願いいたします。」と言って拍手をする。
その拍手に合わせて会場も拍手をする。
その拍手の中、ユ・ヒヨル校長、ヒチョル副首相がステージに登場して来る。
ヒチョル副首相が照れた様に少し下を向いて登場する。
各々が決められた席に着席する。
「え、それでは、これから新入生の名前を呼びます。新入生の皆さんはその場で椅子から立って大きな声で元気よくお返事してくださいね。いいですか?」
「はい。」と大きな声が返って来る。
「いいですね。その調子です。先ずは太陽組☀️の皆さんからお名前を呼びます。」
そして、いよいよ虹組🌈の番に
俺達もヒチョル副首相も自分達の子供や甥っ子が、先の組の生徒のように上手に返事が出来るかドキドキしながら待っている。
「最後、虹組🌈の皆さん、お待ちどうさまでした。出席を取ります。アン・テヒョク。」
「はい。」大きな声で返事をしてテヒョクが椅子から立ち上がって、客席に向かって頭を下げる。
その様子を見て、ホッとしているヒチョル副首相がいる。
次は、ヒョクだ。
「イ・ヒョクチェ。」
「はい。」右手を大きく上げて大きな声で返事をしてヒョクが椅子から立ち上がる。
一斉にパシャ、パシャとフラッシュの音が聞こえて来る。
「ヒョクお兄ちゃん。」とハルが小さな声で言いながら手を振っている。
「イ・ドンヘ。」
「はい。」ドンヘも右手を大きく上げて元気よく返事をして椅子から立ち上がってテヒョクやヒョクのようにお辞儀をする。
「ドンヘお兄ちゃん。」と今度もハルが手を振りながら小さな声で名前を呼んでいる。
「以上をもちまして大空小学校2024年度新入生150名の出席取りを終わります。」
「次は、校歌斉唱です。新入生の皆さんは今日初めて聞くことになりますが、皆さんの大先輩がお手本を見せてくれます。」
そうジョンス首相が言ってステージに現れたのは、ジョンウン副首相とリョウクだ。
えっ、2人もここの卒業生なの?
知らなかった。
リョウクがピアノの前に座って、ジョンウン副首相がハンドマイクを持って俺達父兄の方に一礼をして、今度は新入生の方を向いてリョウクの弾くピアノに合わせて、校歌を歌い出した。
その素敵な演奏と歌声に、校歌であるにもかかわらず思わずジーンと来てしまった。
「続きまして、ユ・ヒヨル校長から新入生に向けたお話が、ユ・ヒヨル校長、お願いします。」
「皆さん、大空小学校にようこそ。ご父兄の皆様ご入学おめでとうございます。………以上をもちまして、わたくしのご挨拶とさせていただきます。」
「引き続き、ご来賓であるキム・ヒチョル副首相のお言葉をいただきます。ヒチョル副首相どうぞ。」
ヒチョル副首相がマイクのある所まで移動して、内ポケットから封筒を取り出して、父兄に一礼してから
「ただいまご紹介に与りましたキム・ヒチョルです。チェ・シウォン国王陛下からのお言葉をお預かりさせていただいておりますので、代読させていただきます。」
えっ、シウォナいつの間に。
俺は、シウォナの顔を二度見した。
「新入生の皆さん、入学おめでとう。ご父兄の皆様ご入学おめでとうございます。ご父兄の皆様におかれましては、こんにちまでの日々、いろいろなご苦労様があったことと思います。私も一人の父親として子育ての難しさを実感しております。けれど、どんなに大変なことも子供の笑顔がそれを補って、それ以上の幸せを私にプレゼントしてくれました。これからも私も皆様と親として共に悩み一緒に成長していければと思っております。新入生の皆さん、パパとママ、ジイジやバアバ、お兄ちゃんやお姉ちゃん、弟や妹、君達のことを愛している全ての人々が小学校入学をお祝いしてくれています。君達には輝く未来があります。その未来に向かって元気よく、この大空小学校で学んで下さい。友達もいっぱい作ってください。何でもいいから好きなことを見つけてください。その好きなことを学校は応援します。最後にもう一度、入学おめでとう。」
「以上が王様からのお言葉です。オレ、私からも、一言。人と比べるな。人それぞれに良さがある。そして、しんどい時は無理に進む必要はないからな、休んでもいいからな。入学式には相応しくない言葉だけれど、心のどこかに覚えていて欲しい。以上が私からの入学記念の言葉となります。」
ヒチョル副首相らしい言葉だなぁ。
シウォナも頷いている。