やっぱ、違うな。

なんだかんだといっても、あの人はアイドル。

それも完璧な究極なアイドル。

所詮一般人の俺とは違う。





「ねぇ、さっきからママ鏡の前で体操しているけど。」ヒョクがドンへに言っている。

ドンへも「何の体操だろうね。幼稚園の体操じゃないよ。だって、僕それだったらわかるもん。」

「僕だって、それだったらわかるよ。わからないから、ドンへにきいたんじゃないか。」


「お兄ちゃん達ケンカしちゃダメ。」とハルが2人をなだめている。


「だって、ドンへが」

「だって、ヒョクが」

お互いに譲らない。



「でも、僕達、もうすぐ幼稚園には行かないよ。」とドンへが

「もしかして、最後にパパやママ達が僕達のために何かしてくれるのかな?」

「そうだよ、ヒョクすごいな。きっと、そうだよ。」

「うん、楽しみだね。」ヒョクの言葉にドンへもハルも笑顔で頷いている。



もう、何回やってもラジオ体操にもならない。

動きが早いんだよ。

ゆっくりって出来るのかなぁ?

俺は、スマホの画面をコマ送りに出来ないかといろいろ検索してみる。

でも、写真をコマ送り動画にするっていうのばかりで俺が求めているものがない。

やっぱり、地道にちょっとずつやるしかないのかなぁ。

しんどいなぁ。



俺がリビングのドアを開けると、子供達が3人塊って、キュヒョナを見ている。

「おい、お前達、そんな所で何やってるんだ。」


子供達が俺の元に走って来て

「パパ!」

「パパもやるんでしょ?」

「早くママの所に行ってあげて。」

3人が口々に俺に畳み掛ける。

俺は、何の事だかさっぱりわからないので

「俺が、何やるんだよ。」

「一体、お前達何言ってるんだ。」と俺も思わず心に思った事を素直に口に出してしまう。



子供達は "えっ"って顔をして俺の顔を見る。

そして、物凄く悲しい顔になってしまった。


「なんだ、どうした。その顔は」 

「俺が、俺のせいなのか。」



「だって、パパ、ママと一緒に僕達の幼稚園……えっと、もうすぐ幼稚園に行かなくなるから……」

「卒園か?」

「そう、卒園。」

「その卒園の……」

「卒園のお祝いか?」

「そう、お祝いに、パパとママが何かやってくれるのかって思ったの。」

「キュヒョナが、ママがそう言ったのか?」

「言ってはいないけど。」

「ママ、昨日からずっと、鏡の前で体操しているから。」

「僕達、ママとパパが僕達に内緒で僕達のために何かしてくれるのかと思ったの。」



そう言って3人が、鏡の前でブツブツ言いながらスマホを見てなにやら動いているキュヒョナの方を見る。

俺もつられてキュヒョナの方を見る。



確かに、体操をしているみたいにも見えるけど、これってもしかしたらダンスしているのか?

ブツブツ言っているのは歌を歌っているのか?

そして、スマホでダンスの振り付けを見ているのか?

でも、ダンスというよりはチビ達が言うように体操に近いかもしれない。

お世辞にもダンスじゃないな。



「なあ、ママにナニやってるのか聞いたのか?」


「うううん」と言うように3人が首を振る。


「じゃあ、さっき、お前達が俺に聞いた事は何も聞いていないんだな。」


「うん」と言うように3人が頷く。


ほんじゃ、確かめるか。



俺は、鏡の前にいるキュヒョナのそばに行く。

いつもなら、すぐに俺の事に気が付くのに、今は余程集中しているのか俺に全然気が付かない。

一生懸命に体操もといダンスを踊っている。


「キュヒョナ」俺が呼び掛けると


「えっ!」と言って10cmはとびあがった。

こんな所はドンヘと一緒だな

俺は思わず苦笑する。

子供達を見ると

ヒョクがドンヘに " ママ、飛び上がったぞ。ドンヘみたい。"っていう風に肘で小突いている。


「どうして、シウォナがいるんだよ。いつからいるだよ。」

「さっきからいるんだけど、キュヒョナ全然俺のこと気づかないからさ。」

「性格悪いな、来たんなら声かけてよ。」

「声掛けようと思ったけど、キュヒョナが一生懸命にダンス(体操よりダンスって言った方がキュヒョナのプライドを傷つけない俺の優しさ。キュヒョナわかってくれ。)していたから声かけそびれちゃった。」

「ダンスってわかる?」って嬉しそうに聞いて来る。

「まあね。」と相槌を打つ。


そして、本題へ


「あのさ、そのダンスナニ?」


「ナニって、なんだよ。」

「いや実は、3人がさぁ、お前と俺でヒョクとドンヘの卒園のお祝いに何かダンスを踊ってくれるんじゃないかって言ってるんだけど、俺はやんないけど、キュヒョナはそのつもりなの?」

「俺もやんないよ。」


" えっ!"という表情で俺達のやり取りを聞いている。


ドンヘが「だって、ママ体操してたのに。」泣きそうになりながら言っている。


《体操って》心外

でも、俺レベルだとそう見えるのもしょうがないか


「じゃあ、何で踊ってたんだよ。期待した子供達にちゃんと説明してやれよ。じゃないとヒョクとドンヘが納得しないぞ。」

" パパ、ありがとう。"

" 僕達の気持ちをわかってくれているのパパだけだよ。"

って顔をした2人が俺を見ている。


「なんだか、怖いな。」

「そりゃそうだ。キュヒョナの答えいかんよっては、ヒョクとドンヘが怒るよな。」と2人に確認している。


ねぇ、シウォナ、楽しんでない?

2人を出しにしてない?


あぁ、言いにくい。

言うの嫌だな。

どうせ、《ママったら》って思われるよな。

でも、言わないと納得しそうにないから、心を決めるか。

エイヤ~っで言うしかないよな。


「あのさ、東京で」

「東京?」

「日本の東京。そこでSMTOWN Live が開催されて、そこで、キュヒョニオッパが」

「おい、ちょっと待てよ。また、あいつか。もしかしたら、キュヒョンが歌ったっていうんじゃないだろうな。」

「ご名答。どうしてわかったの?スゴいな、シウォナ。」

「そんなの誰でもわかるよな。」と今度も2人に同意を求めている。

なぜか2人も激しく頷いて同意している。

「そうかな。」

「そうなんだよ。」

「それでね。キュヒョニオッパ達が、」

「達って、誰なんだ?スジュじゃないのか?」

「違うんだよ。このSMTOWN では、キュヒョニオッパのお友達でギュラインっていうのを結成していて、東方神起のチャンミンとSHINeeのミノとかがメンバーなんだけど、今回はミノの代わりにNCTのショウタロウでやったんだ。日本のYOASOBIっていうグループの《アイドル》っていうのをやったんだ。それが、とにかくメチャクチャ可愛いんだよ。それを、俺が真似していただけなんだ。だから、その2人には悪いけどママが、ただ単にキュヒョニオッパの真似がしたかっただけなんだ。だって、これ見てよ。見たら絶対に《可愛い!》って思うハズだよ。」

「俺は、絶対にないから。あいつなんかあり得ないから。」

「とにかく、見てよ。」そう言って俺はスマホの画面をみんなに見せる。



ハルが「可愛い!」って言いながら見てくれている。 

ヒョクとドンヘも画面を見ながら一緒に踊っている。


えっー、初見なのに俺より上手い。


見終わって3人が「ママ、もう1回」ってリクエストが入った。


今度はハルも踊り出した。

ハルも俺より遥かに上手だ。


「わかった。これって面白いね。」

「ね。さすが完璧な究極なアイドルでしょ。」

「うん、完璧な究極なアイドルだね。」と言いながらアイドルポーズを決めている我が家の完璧な究極アイドル3人組。舌もチラッと出している。

完璧。


「俺だって、出来るぞ。」と言ってシウォナもやっている。


ありがとう。

ちょっと違うけど。


その後は、みんなでSMTOWN Live を一緒に見た。

最初の衣装のシウォンさんがシウォナみたいだったり。

ヒニムの扇子を飛ばす所がカッコよかったり。

ドンヘちゃんが「Black Suit」の時に白いシャツだけなのはどうして?他のメンバーはちゃんと上着を着ているのに



途中でドンヘがいなくなった。


そして、戻って来たら幼稚園の白いブラウス1枚に着替えている。

「ドンヘお兄ちゃんと一緒。」


「そうだけど、寒くない?」

「大丈夫?もう一度見せて。」と言って


同じように、ブラウスのボタンを外していた。