東京新聞 見えない都議(上)  | 前目黒区議会議員 鴨志田リエ オフィシャルブログPowered by Ameba

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東京新聞の論評が的を得ていたのでご紹介します。

見えない都議(上) 「猪瀬さんは一過性」

2013年6月12日
 「猪瀬さん、わかってないな。うちらとあなたは同じくらいなんだよ」。東京都議選の準備に追われる議員が、猪瀬直樹知事(66)への対抗心をあらわにした。
 反発の向かう先は、昨年十二月の猪瀬発言。四百三十三万八千票という史上最多得票で当選し、「都議会も、民意を僕が代弁しているということを尊重していただきたい」と誇った。
 副知事就任以来、折り合いの悪かった都議会をけん制したと受け止められた。
 しかし、数字の上では、猪瀬知事もうなるような民意が都議会に託されている。前回都議選で当選した百二十七人の得票を合計すると、四百三十五万九千票。一人では太刀打ちできないが、議会全体では「上回る」。
 共に巨大な民意を代表する知事と議会。猪瀬人気にあやかろうと、都議選用にツーショット撮影に臨んだ候補予定者も多かったが、ここへ来て風向きが変わってきた。
 六月四日の本会議。猪瀬知事が進める都営バスの二十四時間化をめぐり、公明党から「突如、ニューヨークで表明した」と、パフォーマンスを暗に非難する質問が出た。自民党席からもヤジが飛んだ。ともに、知事選で支援した与党だ。
 選挙後をにらんだ主導権争いが、既に始まった気配がある。
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 「知事ってのは、一過性の人事でしょう」。四年前まで都議を六期務めた実力者、自民党都連の内田茂幹事長(74)は、都知事が戦後に七人交代している点に目を向ける。
 「だから、あんまり気にしない。でも都政、都の官僚機構は永遠だ。自民党は責任政党として、彼らと話し合いながらやってきたんだ」
 自民は、約五十年間にわたって第一党を占めてきた。役人とともに、都政を地道に進めてきたのは自分たち-。こんな自負がにじみ出る。
 役人たちも有力な与党都議を頼り、事務所を詣でる。「週に二、三回しか登庁しない石原慎太郎前知事に代わり、政策判断してくれた」と都幹部は打ち明ける。
 与党が力を見せつけたのが二〇一一年春。築地市場(中央区)の移転費用を盛り込んだ予算案を可決した時だ。自民、公明で過半数に一議席足りない少数与党だったが、内田氏が中心となって民主党の都議を造反させた。
 「長年の懸案が動きだした」。都幹部も胸をなで下ろした。
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 そんな都議会とぶつかった時には、強大な権限を持つ歴代都知事が、煮え湯を飲まされることもあった。
 革新系の美濃部亮吉氏は少数与党に泣き、議会を「地獄」と呼んだ。無党派の風で当選した青島幸男氏は、一議会で四十七もの条例案を否決されるなどした揚げ句、一期で退いた。
 エリート官僚出身の鈴木俊一氏も苦労した。看板政策だった臨海副都心開発の予算案を否決された時、議会に再審議を求める「再議」を行使した。都議会は再び否決し、改選を控えた鈴木氏に「NO」を突きつけた。
 時に、都知事を上回る権限を発揮し、十二兆円もの財政規模を持つ都政を左右する都議会。しかし、知名度のある都知事に比べると、一人一人の都議の政治活動は有権者に見えにくい。
 内田氏に聞いてみた。約二十年間都議を務め、都議会議長も経験したあなたのことを、都民はどのくらい知っているのかと。
 内田氏は答えた。「自分一人でやってるわけじゃない。都民はおれの名前なんて知らないよ」
    ◇
 都議選の告示まで二日。都議の権力と見えざる実像に迫る。