東京の区長・市長選挙で女性の初当選が続出し時代の変化を感じています。
区長・市長選挙は様々な要素が絡み合う選挙。
東京新聞の江東区長選挙を取り上げた「侵食」の最終記事を掲載しました。
<連載・侵食~江東区長選事件>㊦
初登庁し、職員に出迎えられる大久保新区長(右)
11日午後1時すぎ、東京都江東区役所の広場。幹部職員と区議らが、前夜に初当選した大久保朋果区長(52)を出迎えた。ただ、4月の区長選後、木村弥生前区長(58)の初登庁時にあった「祝 初登庁おめでとうございます」と書かれた横断幕はない。笑顔を見せる支援者も少なく、静かな船出だった。
「投票率は過去最低で有権者の目は厳しい。本当に区政を立て直せるのかはこれから」。第1会派の自民区議の表情は硬かった。
◆12月の区長選には不出馬でも…山崎一輝元都議の「意欲」
今回の区長選は異例の状況で行われた。複数の区議らが4月の区長選を巡る公選法違反事件の捜査対象となり、東京地検特捜部の事情聴取を受けていた。
木村氏を全面的にバックアップしてきた地元選出の柿沢未途(みと)衆院議員(52)=自民党を離党=の支援者らの動きはほとんど見られなかった。木村区政を支えた第2会派「江東新時代の会」の区議らも大久保氏やその対立候補を支援するなどバラバラで、まとまりを欠いた。
一方、5選を目指したものの、4月の区長選直前に急逝した山崎孝明氏に代わって立候補、落選した長男で元都議の一輝氏(51)は、大久保氏の選挙カーに乗って投票を呼びかけるなどし、当選に一役買った。自民党江東総支部長でもある一輝氏は「捜査が一段落をしたら、しっかりと(現金提供を受けた区議)本人にヒアリングする」と見解を示し、党をまとめあげる意欲を示す。
柿沢氏らと異なり、一輝氏は区政への影響力を残しはした。だが、ある元自民区議は「山崎、柿沢の争いはなくなるかもしれないが、一輝の一人天下になるとは思えない」とみる。
◆ちらつく小池百合子都知事の影響力
東京都江東区長選で当選し、駆けつけた小池都知事(左)と握手を交わす大久保さん。白のジャケットと緑の服やポスターは小池氏のイメージと重なる
都庁幹部だった大久保氏は柿沢、山崎、木村の3家とは無縁ではある。ちらつくのは、出馬を後押しした都民ファーストの会特別顧問の小池百合子都知事(71)の影響力。小池氏は選挙戦で繰り返し元部下の応援に入り、「小池カラー」を前面に出して票を集めた。
長く区長を務めた山崎孝明氏は、多選で硬直化した区政と批判を受ける一方、都に物言う存在だった。止まっていた東京メトロ有楽町線の延伸事業を動かし、区施設建設のため区内にある都有地の活用を巡り陣頭指揮をとってきた。
大久保氏は出馬会見で「何よりもクリーンな選挙が一番重要。もし公正でない方がいたなら、そういう方と一緒に活動できない」と語っていた。ところが、街頭演説では特捜部の家宅捜索を受けた複数の区議らの姿があった。
就任会見で大久保氏は本紙の質問に「家宅捜索を受けた事実は認識していない。(支援してくれた)各党が応援体制を敷いてくれた」と弁解する一幕もあった。選挙を支えた勢力とどう距離を取り、リーダーシップを発揮できるのか。同じくクリーンさを掲げた木村氏は柿沢氏と「共倒れ」した。
区内の自営業男性(48)はこう話す。「前区長のこともあり、期待値は低いが、見守っていきたい」
江東区長選事件 東京地検特捜部が捜査している公選法違反の容疑は三つある。(1)当選した木村弥生氏側が区長選期間中、有料のインターネット広告をユーチューブに掲載。支援した柿沢未途衆院議員が提案した。(2)柿沢氏側が区議らに現金の提供や打診。木村氏への票の取りまとめを依頼した買収の疑いがあるが、柿沢氏側が同時実施だった区議選への「陣中見舞い」として違法性を否定。(3)柿沢氏側が、木村氏陣営のスタッフら13人に計約91万円の違法な報酬を支払った疑い。