キラキラ


扉の外が怖かった。
見ためには違和感のないヒトたちが、知らない言葉をしゃべり・・・どこの路地も全部迷路に感じられた。


わたしの首から提げられた袋には紙キレと10円玉が3個入っていて、こう書いてあった。


『迷子です。連絡をお願いします。』


デパートに連れて行かれた。定員さんの『いらっしゃいませ』に驚いたし恥ずかしさを覚えた。


なぜ、まだ何も買っていないのに、このヒトたちはお辞儀をして『いらっしゃいませ』とニコニコするんだろう・・・ワカラナイ。


お願い。恥ずかしいから・・・見ないで。話し掛けないで。・・・ニコニコ・・・しないで。


上から下まで、着せ替えられました。


ううん

新しい洋服や靴下や靴を買ってもらった嬉しさよりも、なぜか・・・剥ぎ取られた気分だった。


新しさより剥ぎ取られた服や靴下や靴が可哀相に感じられたし、なによりも・・・さっきまでの自分が『みすぼらしい』という感覚に襲われた。


でも、そんな感想をハッキリ意識する余裕はなく、くちにする余裕もなかった。


まるで、ベルトコンベアに乗せられた ナニかだった。


デパートを出た時、ふと上を見上げた。


人混みと高い建物が邪魔で、さらに上を見上げた。


青い空。が見えた。


それだけが、見慣れたものだった。


くしゃみが出た。



キラキラ


知らない国、知らないおうち、知らないお部屋で朝を迎えたました。


『早安(ツァォアン)』と・・・じいじや ばぁばからから厳しく躾られた朝のご挨拶をすると、訂正されました。


『おはようございます』

今日からは、『おはようございます』。


・・・う・・・うまく・・・発音・・・出来ない。


なんども、なんども、うまく発音できない。


オハヨ・・・ごtheマス

オハヨ・・・ごtheマス


オハヨごtheマス


テレビからは理解できない言語が滝のように噴き出していた。


テーブルの上には、今まで毎朝食べていたお粥や煮玉子や油条や饅頭や豆乳ではなく・・・・・


トーストとバター、それに片目玉焼きと葉っぱが置かれていた。


バターは・・・臭い・・・と思った。






みんな、おうちのヒトと離れて初めて寝た夜のことを覚えてますか?


わたしは、よく覚えている。

見馴れない景色の部屋には、自分のにおいが染み込んだモノなどはなく、どれに眼をやっても落ち着かない。


『晩安(ワンアン)』ってご挨拶して布団にもぐった。


そして・・・ひたすら・・・小さな声で99を唱えた。


今でもわたしは99を日本語で出来ません。


覚えた当時のまま・・・中国語です。


それは・・・朝まで続いた。眠れなかった。


生きてきた中で、最も長く不安に感じた・・・そんな夜でした