ヘッセ 少年の日の思い出 をポーの一族で読み解く(という遊び) | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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ヘルマン・ヘッセ『少年の日の思い出』を再読して

 

エーミールってエドガーぽいなと思った。

初期萩尾望都の世界観ぽい。

 

 

ヘッセの『少年の日の思い出』といえば、中学一年生の国語の教科書に載ってるアレね。思春期のハートブレイクを描いたトラウマ作品。

 

グラスハートな少年の細い指先が蝶を押し潰し、引き裂かれた心のカケラのごとく、砕け散った翅がキラキラと鱗粉を撒き散らす、どこか隠微で耽美な作品。

(個人の感想です)

 

たぶん萩尾望都の方がヘッセに影響されてたんだろうけど、「ぼく」をアラン・トワイライト、エーミールをエドガーにあてて読むとすごく萌えたので、お伝えしたいこのワクワク感、と思った次第。

 

 

 

 

『少年の日の思い出』がどんな話かっていうと

 

 

 

子どもが寝静まったころ「わたし」は「客」の要望で蝶(蛾)の標本を見せる。

「客」もむかし標本に熱中したことがあった。

しかし「客」はある過ちのせいで標本の趣味が苦い思い出として心の棘になっていたのだったー

 

ランプの光のもと、「客」=「ぼく」はある少年の日の思い出を語り出す……

 

「ぼく」が8歳か9歳のころから仲間内では蝶(蛾)の標本が流行していた。10歳ころには「ぼく」も夢中になっていたが親が非協力で、標本箱がしょぼいボール紙だったので引け目に思っていた。ある時「ぼく」は希少なコムラサキを捕らえることができた。このときばかりは自慢したい気持ちを抑えきれず、「ぼく」は隣家のエーミールに見せることにした。

エーミールはにくたらしいほどデキる奴で、非の打ち所のない模範少年ってタイプ。エーミールの標本は数は少ないけれど巧みで美しかった。「ぼく」はそんなエーミールに感嘆してもらえたら、と思ったんだ。

だけどエーミールは「展翅の仕方が悪い」だの「足が二本欠けている」だのケチをつけてきた。高揚していた気持ちを挫かれものすごくガッカリした。もう2度とひとに獲物を見せようなんて思わなくなった。

それから2年経って、エーミールがクジャクヤママユという幻の蝶(蛾)を捕らえたという噂をきいた。「ぼく」はたまらない気持ちになって、こっそり見に行った。エーミールはいなかった。クジャクヤママユの孔雀のようなおおきな斑紋を見たくてピンを外したら、誘われるような気持ちでついそのままとってしまった。盗んだという自覚もなかった。しかし我に返って「盗みをしてしまった」と思うと、同時にバレたくないという気持ちも湧き上がり、クジャクヤママユをポケットの中につっこんだ。クジャクヤママユはこなごなにくだけてしまった。壊れたそれをエーミールの部屋に残して帰宅した。

「ぼく」はこのことを母親に伝えた。母は正直に謝るべきだと言い、「ぼく」もそうするしかないと思った。

「ぼく」は隣家に行きエーミールに謝罪した。詳しく弁解する前に、エーミールは舌打ちし「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」と言ってどんな補償にも応じようとはしなかった。「ぼく」を冷ややかに軽蔑しただけだった。

「ぼく」は取り返しのつかないことがあることを知り、自分の標本を一つずつ潰し、取集の愉しみから決別したのだった……

 

 

というような短編。

(わたしの偏け…解釈が入ってるざっくりあらすじ)

 

 

『子鳥の巣』で懐中時計をとったアラン、エドガーに叱責されてむくれてるアラン、大人びたエドガー……などが浮かんできた。

 

この短編を初読したのはたぶん中学生くらいで、その頃は「ぼく」のいたたまれなさに共感したけれど、再読してみると、「ぼく」には模範少年として完ぺきすぎるできすぎるいけ好かない出木杉くんに見えていたエーミールも、「ぼく」と同じ年頃の少年で、得難い宝物のクジャクヤママユを台無しにされてすごく傷ついていただろうことに思い至った。

 

超然としてみえるエドガーが、アランが思うほど大人ではないように。

 

「ぼく」は永遠の少年のように、子どもっぽく自分の痛みだけをかかえている。

 

情けない恥ずかしい衝撃的だったあの日の思い出。

だけどそのときを思い返すとき、エーミールの内面までには思いを馳せない。

 

くだけた羽、ちぎれた足。

もう戻ってこない少年の日。

許されなかった失敗。

 

仄暗い闇に灯るランプの光、燻る葉巻、閉じられた「わたし」の標本箱、遠くの寝息……

 

エーミールがどんな気持ちでばらばらになった宝物を補修しようとしたのか、散らばったカケラを集めようとしたのか……

 

 

しょんぼりーぬ

 

 

エーミールのイメージで描いたエドガーぽいの。

(うまく描けません)

 

 

 

 

アランぽい「ぼく」のつもり。

(やっぱり似てない)

 

 

 

 

なっとくいかない。

なんでぼくが潰れたボール紙の空き箱であそぶような貧乏人の役なの?

トワイライト家のぼくが?

蝶(蛾)なんてさわるシュミないし。

ていうか、人間時代はぼくこそが模範生だったよ!

 

 

アランだったら「ぼく」役に文句言いそう。

 

 

 

ひとりの母親としては、「ぼく」が悪いことしてもすぐにママンに告白&相談してきたのはいいなあと思った。

うちの子は言ってくれなさそう。隠蔽しそう。わたし自身も親に話さないタイプだったから正直に言うだけエライと思うわ。

 

許されなくても謝ってよかったと思う。

黙ってるほうが後々まで引きずるからね。

 

「ぼく」は言ってからも引きずってるけども。ママンにもエーミールにも話せてよかったんだよ。

 

 

 


懐中時計のくだり

(萩尾望都「ポーの一族」愛蔵版2巻より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


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