今日深夜にフジテレビで放送される実写ドラマ『夫のちんぽが入らない』著者こだまさんのエッセイ。
とても読みやすい軽妙な筆致で、悲惨な人生を語っている。
悲惨、と言っては失礼か。
本人は自分の人生を不幸だとは思っていない。
(ちょっとは思ってるかもしれない)
辺鄙な田舎で生まれ育った著者は、偏見まみれの無知蒙昧な輩だらけのなか、借金暴力異性問題をまきおこす親族、夫婦家族は罵詈雑言でコミュニケーションする環境を「ふつう」としていた。
荒れ狂う嵐の中で家庭を回す役割を担った母は、暴風雨に対抗するために近隣住人から「雷おばさん」と呼ばれる強烈なおばちゃんになった。
常にほとんど発狂しているような人だった。
茶碗や包丁の飛び交う家庭で正気でなんかいられなかったのだろう。
叩かれるか怒鳴られるか縛りつけられるか。
著者の母親はそういう存在だったのだが、時の流れは「雷おばさん」を通販好きの穏やかな老婆にした。
トラブルを巻き起こす親族は亡くなっていき、世話しなければいけない家族は巣立っていった。
嵐は去ったのだ。
テレビを見て笑っているかつての「雷おばさん」に、人は変わればかわるのものだと思う「わたし」に恨みつらみはない。
かつて「わたし」をいじめた少年に対する筆もやさしい。
見方が違えば、描き方が違えば、陰惨で救いのない思い出だったろうに。
仄かなぬくもりを感じさせるエピソードとなっている。
この本で語られる「わたし」のいた場所は、
息を潜めてくらした山奥の実家
難病治療のため長期入院した病院
転勤で選ぶ余地がなくきまった悪臭にそまったぼろ家「くっせぇ家」
衣食住のなかで、住に限ってもコレ。
語られる出来事のひとつひとつが、不幸自慢大会で入賞優勝を狙える。
それなのに、ふしぎと重くない。暗くない。
素晴らしい文章を書くのに、驕りはない。
周囲にはこれまで通り引きこもりがちな無職の主婦として、作家であることも家族に隠し、ベストセラー作家であることがバレないように苦心して生活している。
二重生活の嘘をつくストレスで耳が聞こえなくなったりしている。それでも、このやり方を変える気は無い。
書かずにはおれないから書いている。
その熱が、かっこいい。
すき。
漫画版の『夫のちんぽが入らない』ゴトウユキコ著を読んで、次にこの『ここは、おしまいの地』を読んだ。
漫画版は薄暗くて湿度の高い独特の絵が良かった。
汗臭さ埃っぽさが漂う、昭和の青春ドラマのような雰囲気。
『夫のちんぽが入らない』はもう漫画を読んだからいいかなーと思っていたけれど、文章の素晴らしさ惹かれたのでこれからちゃんと原作版『夫のちんぽが入らない』も読んでみようと思う。
こだまさんのファンになってしまったので、そのあとに『いまだ、おしまいの地』も読まねば。
そんなこだまさんのブログ
↓
半年ぶりの今日、さっき、更新があった。
地上波放送さまさま。
実写ドラマは
フジテレビ 2021年1月11日(月)スタート 毎週月曜 26:15~
FOD、Netflix 配信中
調べたら
放送地域 関東地方限定
ですって。
我が東海地方はもちろん、近畿地方も著者の住まう北の地でも放送されないってさ。
Netflix加入民じゃない(予定もない)ので、視聴は不可能ですわ。
ちーん
(ちん、だけに)