お出かけできない日々を慰めてくれるのは脳内旅行です。
ページをめくるだけで、滅多にお目にかかれない自然現象や摩訶不思議な風景を眺めることができます。
ああ、これがダイヤモンドダストか。
氷河はこんな美しいものを放っていたのか。
なんてね。
思ったりもするわけです。
NHKの「地球ドラマチック」や「ダーウィンがきた」や、BSの「世界ねこ歩き」なども素晴らしいのですが、本は本で、映像動画のダイナミズムとはまた別の愉しみがあるのです。
映像の世界はディズニーランドのように「さあ、どうぞ!」とお膳立てしてくれます。
氷のカケラの輝き、煌めくなめらかな緑の木々。
雄大な音楽が優しく手を引いて「ここだよ」「素晴らしいでしょう!」と誘ってくれます。とっても親切。
本はそこまで親切ではありません。
切り取られた一葉の写真。
添えられた説明文。
どこに注目するのか、何に興味を持つのか。
文字列と色彩の先に見えるのは、自分の記憶の引き出しに仕舞われた風だったり匂いだったりするのでしょう。
ダイヤモンドダストに喉を締め付ける冷気の束音も凍りつく冬の朝を思い出す人もいるように、わたしは聖闘士星矢の氷河の技を思い出したし、奇岩の数々のなかでも実際にこの目で見たトルコカッパドキアの群立するキノコにより心を掴まれたのです。