紫苑 ぼくの地球を守って 恋した話 | [ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

[ridiaの書評]こんな本を読んだ。[読書感想文]

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紫苑が好きだった。


「ぼくの地球を守って」にハマっていたのは中学時代。

ハマりすぎで教室にスケッチブック(でかい)を持っていき、休み時間はずっと月の絵を描いているヤバい女子中学生だった。

振り返ると、完全なる中二病。
中二病とはよく言ったものである。

係りのカードは木蓮のガチな模写を描いた。
トレーシングペーパーや雲形定規や青色インクを求めて遠くまで自転車とばした日が懐かしい。はじめてスクリーントーンを買ったのもこの頃だった。
近所の文房具屋さんには匂い付き消しゴムやキャラクター付きシャーペンしか売ってなかった。
制服のスカートにもスクリーントーンの欠片が付いていたと思う。
お風呂に入るといつもスクリーントーンカスが浮いた。

そんな奴、そりゃ普通のクラスメイトから遠巻きにされるわけである。


さいわい前世の記憶とかソウルメイト的な発言はしてなかったので、ギリギリ精神的に病んでいるとは認定されなかった。はず。極度のオタクだと思われていただけだった……んじゃないかな、たぶん。

月世界で紫苑が孤独に生きた9年間に想いを馳せていたり、窓から見える木の葉の揺れるさまにサージャリムの恩寵を感じていたりしていた。
心の中で思うだけで口には出してなかった……はず。

ぼく地球フリークには通常の生活だと思う。






そんなわたしが愛していたのは紫苑。
 



孤独で、不器用で、まわりを傷つけながらもあたたかいものを求めていた、渇愛の人。


ラズロとキャーともっと長く時を過ごせたら、もう少し素直になれたかもしれない。
 



あと少しだけ正直になれたら、もう少しだけ幸せになれたかもしれない。


いろんな「もしも」をおもうたび、そのどれもが得られなかった紫苑の淋しさに胸が締め付けられる。
転生してありすの口から木蓮の気持ちを聞くまで、木蓮の愛情にも確信がなかった。

紫苑は自分の能力は理解していたけれど、自分自身の魅力には無頓着で鈍感だった。


紫苑は、純粋で繊細で愚かな人だ。
優しさや思いやりや好意を受け取れない。

その裏側ばかりを気にして、純度100パーセントの愛以外はすべて悪意に変換して、自分が傷つかないように鎧って棘で相手を刺した。


みんな、紫苑が好きなのに。

魅力的な紫苑に近づきたくて、ただ微笑んで欲しかっただけなのに。


冷たい眼、意地悪に歪んだ頬、ぶっきらぼうに向けられた背中。
拒絶につぐ拒絶、暴言、無視。
 



紫苑の頑なな態度に、誰もが遠ざかってゆく。

遠ざかる人々に、紫苑は「やっぱりだ」と思う。
自分で仕向けておいて「ホラな。やっぱり去って行くんだ」と虚しい納得をする。


それでも去らない人が欲しかった。


木蓮には木蓮の孤独があって、消えないキチェの痛みがあって、お互いに深く労わりあって愛し合っていたのに、それぞれの気持ちに自信がなかった。

割り切れない心残りが転生に繋がったのだと思う。



今生の輪くんが紫苑の記憶と小学生の自意識に引き裂かれているのが切なかった。
 

子どもらしいワガママなありすへの恋と、大人の紫苑の木蓮への想いが混じって混乱する輪くんが、いつか解放されたらいいのにと願った。
 


紫苑の心は紫苑のままに、輪くんは輪くんとして、あたらしい人生を歩んで欲しかった。


物語の結末はわたしの望むものではなかったけれど、紫苑と木蓮の誤解が溶けたのは良かった。



 

 

 


昔は嫌いだったけど、大人になってからは玉蘭が好きになった。
玉蘭のいい意味での凡庸さや無神経な優しさが愛しい。
迅八もいいヤツだよね。





後日談で転生組が月世界の関係性を引きずっちゃうのがわたしの好みの結末ではなかったので、その後の続編もスピンオフ作品も読んでないし今後も読む予定はありません。















 




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