キンちゃんに、「春節に髪は切らないほうがいい」、と言われてから2か月も、美容院に行くことを我慢していた。
軽いくせ毛である私は美容院には苦労していて、20代のころから20年以上、新しい門を叩いては失望する、といったことを繰り返していた。
切ったその日に文房具入れからハサミを取り出し、ジョキジョキと手直しすることもしばしばあった。
美容院難民だった私がようやく巡り合えた運命の美容師。ですが数年通ったある日、今日でここを辞めるんです、と言われて背筋が凍った。
その日美容院に行ったのも何か虫が知らせたのかもしれない。
もし春節だったら、今生の別れになるところだった。
慌てて転職先を尋ねたら、私の住む市にオープンしたモール内の、カット代金1,800円均一のチェーン店だと言う。
かくして私はこれまで5,000円で切ってもらっていた同じ美容師に、破格の値段で髪を切ってもらっている。
ひとつだけ難点があって、このお店は予約ができません。
のこのこ昼前に出掛けたりすれば4時間待ち、ということがあるので、開店前から行列に並ばなければいけない。
まあ文句は言えません、1,800円なのですから。
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今回も行列に並んでウエイティングリストに名前を書いたけれど、やはり1時間半待ちだった。
何をして時間を潰そうか、と考え、今回は本を読むことにしました。
旅行のガイドブック以外の本を買うのは何年ぶりだろう。
迷わず手に取ったのが、この本、
ノンフィクション作家沢木耕太郎による藤圭子へのロングインタビューです。
なぜ今藤圭子か。
先日尊敬する先輩にお会いしたとき、次回は藤圭子について語りましょう、と言われ、予習をしなければ、と思ったからだ。
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美容院の待ち時間で読み終えた。
インタビューは紀尾井町ホテルニューオータニ40階の、バーマルゴーで行われていた。
8杯のウォッカトニックを傾けながら語り合う28歳の女と31歳の男の会話。
沢木耕太郎はもともと藤圭子のファンということもあり、そこここに好きという気持ちが垣間見えて気恥ずかしい感じがある。
藤圭子の夫、宇多田照實氏が沢木耕太郎に激怒したという気持ちも少しわかる気がした。
あとがきには、一度は世に出すことを諦めたこの本を、藤圭子の自死後、娘の宇多田ヒカルに捧げる意図で出版に踏み切った、という主旨のことが書かれていた。
人がもっともらしいことを語るときは誰かの影響だったりすることもあって、学のある沢木耕太郎の語りにはちょいちょいそいういう青臭さを感じたのですが、藤圭子の言葉は違っていた。
ピュアで聡明で美しい28歳の藤圭子を、私はとても好きになった。
でも、娘として、この本を読みたいと思うかどうかはわかりませんでした。
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ってなわけで、予習、完了です!
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インタビューの中で藤圭子が、自分のことを酷く書くのは決まって女性セブン、と言っていたので、今回私、美容院で、女性セブンが運ばれてきたのをきっぱり断ってやりましたよ 。
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ところで、藤圭子の引退のきっかけのひとつが喉の手術により声が変わってしまったことだと知り、激しく同情した。
一緒にするのはものすごくおこがましいけれど私も今や、カラオケが楽しく歌えません ↓。
プロの歌手でもないのですから、と医者には諭されましたが、
悔しいです
(by ザブングル加藤。)
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