今年も紅白歌合戦からのゆく年くる年で新年を迎えた。
最近は紅白で新しい歌を覚えて、お正月のあいだ口ずさむ。
ゆく年くる年はジャニーズカウントダウンと丸かぶりするので未だに子どもたちにぶーぶー言われますが、あの、暗から明に代わる画面とともに家族で新年の挨拶をするのがわが家の決まりと、しぶしぶ受け入れてくれている。
挨拶のあとは速攻でジャニーズカウントダウンにチャンネルチェンジです。
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先日テレビで、名物プロデューサー土屋敏男さんがこんな取り組みをされていることを知った。
あの日あのときの番組表が検索できたりもします。
あのころのテレビの記憶は、やっぱりキラキラしている。
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小学4年生の夏、母は私と妹をやぶからぼうに六本木にあったNET本社に連れて行った。
現在のテレビ朝日です。
通されたのは、黒柳徹子が司会を務めていたワイドショー、「13時ショー」のオーディション会場だった。
プロの指導による「夏休み ちびっこフラメンコ教室」というコーナーへの出演をめぐり、大勢の母子連れが押し掛けていた。
ひとりずつ前方の横長テーブルに呼ばれて、3人ぐらいのおじさんと雑談する。
子どもらしいことを言っておじさんたちをわははと笑わせ、母の元へ戻ると、妹とともに名前を呼ばれ、テレビへの出演が決まった。
会場で仲良くなった同じ年のヨリコちゃんが、「テレビに出られるなんて夢みたい」、と言った。
それを聞いたとたん、私もこの状況を唐突に実感した。
信じられない!わたし、テレビに出るんだ。
女の子は6人選ばれた。 ちびっこをあれだけ落としておきながら、うち2人は外国人女子大生だった。
1人だけ来ていた男の子も選ばれていたので、多様性を重視したのかもしれない。
そのまま楽屋に連れて行かれてレオタードや長くてひらひらしたスカートを採寸してもらい、大きな丸いイヤリングを受け取った。私は白、妹は緑だった。
初めてのイヤリングはその後も大切に持っていて、少なくとも結婚前までは良く使っていた。
何回か練習に通って、生放送の本番を迎えた。
生まれてはじめて履くストッキングはすべすべして気持ち良かった。
イヤリングとストッキングで大人になった気分だった。
スタジオは天井が高く、広くて眩しかった。
2日間の出演のうち、1日目のゲストは、森進一だった。
リハーサルで森進一が何度も「おふくろさんよ、」と歌うのを聴いていたヨリコちゃんが、百恵ちゃんだったらよかったのに、と残念がった。
フラメンコの前に、なぜか中国雑技団のVTRを見せられて、黒柳徹子と一緒に皆で一生懸命コメントした。
フラメンコがはじまると妹のぶかぶかのストッキングと靴がぐーんとアップになって、森進一がふふふと笑った。
2日目のゲストは冒険家の植村直己だった。
黒柳徹子と植村直己とのトークが盛り上がり、なかなかフラメンコ教室の時間にならなかった。
早くフラメンコに、と促すディレクター。
それを強靭に片手で制す徹子。
おいおい、
妹のストッキングが
どんどんズルズルさがって
きたよ。
だけど偉大な冒険家の話と、昨日今日かき集めた屁こき虫みたいな子どもたちのお遊戯を比べれば、徹子じゃなくても植村直己を優先したでしょう。
今ならよくわかります。
はじめてのテレビ体験は楽しくて、あっという間に終わってしまった。
夏休みが明けて登校すると、クラスメートたちから、「見たよ」と言われた。
雑技団を見ながら私が話したことを、好きだった男の子が覚えていてからかわれた。
その後ほどなくして「13時ショー」は、トーク部分に特化した「徹子の部屋」になった。
徹子ももう、夏休みに子ども素人の相手をする必要がなくなった。
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母は、何かとわが子をテレビに出したいと思っていたフシがある。
5年生のときには、獅子てんや瀬戸わんやが司会をつとめていた日曜お昼の人気番組、「家族そろって歌合戦」のオーディションに連れてゆかれ、姉弟妹で出演することになる。
一回戦で、ジャクソンファミリーばりの歌うま姉妹、ウサギさんチームにこてんぱんに負かされるのですが、ゲスト審査員の中条きよしと石川さゆりが、最後にわがクマさんチームを「ファミリー賞」に選んでくれた。
賞品として、
パロマガステーブル 1台、メナード化粧品 1式、東ハト キャラメルコーン・オールレーズン 1年分、ボンカレー 甘口辛口100食分、
が贈られた。
すべてのスポンサーからこれでもかというくらいの大盤振る舞い。
量でいえば優勝賞品より多かった。
届いたお菓子とカレーは1部屋を占領した。
それからの数年、母のおしろいはメナードだったし我が家のカレーと言えばボンカレーだった。
と、いうわけで私は今もボンカレーが大きらいだ。
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先日、テレビ制作会社で働く次女が担当する番組にちょっと映ることがあって、同僚に、見てねと話したら、うちはTVerしか見られないんです、と申し訳なさそうに言われてしまった。
海外駐在を経て、TVerがあれば事足りると思うようになったと言う。
その通りかもしれないし、YouTubeやNetflixも好きだけれど、私はテレビじゃないと、やっぱり寂しいと感じてしまう。
うまく説明できないのですが、私はテレビの、同じ時間を日本中の人たちと一緒に過ごしている感じが何だかホッとするし、好きなのです。
次の日学校で、昨日のあれ、面白かったよね!って皆で盛り上がれる、あの感じ。
テレビを見ながら、あの人も見ているかな、と思えるあの感じ。
だから録画とかTVerじゃ駄目で、コアなターゲットに向けたYouTubeの配信でも、やっぱり駄目なのです。
土屋敏男さんの冒頭の取り組みを知って、ちょっと嬉しかった。
がんばれ、テレビ!!
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ちなみに今でもずーっと気になっていることがありまして、
ちびっこフラメンコにひとりだけ合格した男の子。
親の付き添いなしでひとりオーディションに来ていて、妙におじさんくさくてやたら話しかけてきて、衣装合わせだけして本番には来なかった、
あれ、
松尾伴内だったんじゃないか。
いつか本人に会う機会があったら確かめてみたい。
そうですよ、と言われたところでやっぱりね、と言うだけなんですけれども。
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以上、お正月らしく登場人物豪華め(でも若干渋め)でお送りいたしました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。