やっぱりヘン。後見制度支援信託 | ペーパー社会福祉士のうたかた日記

ペーパー社会福祉士のうたかた日記

社会福祉士資格をとるまでと、とったあと+α。浮世のつれづれ、吹く風まかせの日々。

ricoじいさん(ばあさんでも可)は、いつものように、怒っていた。
意を決して、その管轄窓口に行き、
「これはどうなっておるのだ。おかしいとは思わんのか!」
バーンバーン(←コーフンしてカウンターを叩く音)!
と、出てきた職員が、怪訝そうに、
「あのー、もうとっくに当方、意思表示してますけど…」

怒りのricoじいさん、こりゃ一本とられたな。
すまんすまん、ハハハ。

…という図である。長くてごめんね。

なんのこっちゃというと、後見制度支援信託のことである。
↓こちらの報道、ご記憶に新しいところかと思う。

後見人による着服18億3千万円 昨年度、最高裁が調査
2011年10月21日8時2分asahi.comニュース
「成年後見制度」をめぐり、後見人などを務めた親族が着服した額が、
昨年度の10カ月間で、少なくとも総額18億3千万円にのぼることが、
最高裁が実施した初めての調査で分かった。
不正行為によって、後見人らが解任されるケースも増えているという。

最高裁によると、全国の家裁で昨年6月~今年3月に調べた結果、
計182件の着服が判明した。不正行為により家裁が後見人らを
解任した件数も2001年の51件から、昨年の286件へと急増していた。
(以下略)


さらにこの後日談で、ごく最近のニュースは、こうなっている。
↓冒頭のricoじいさんは、この導入に「?」と思ったのだ。

株に流用、預貯金着服…不正相次ぐ成年後見制度-後見制度支援信託を導入へ
2011.11.4 21:10msn産経ニュース
高齢者や障害者に代わり、親族や弁護士らが財産を管理する成年後見制度。
高齢化社会の“見守り役”と期待されながら、
後見人が被後見人の財産を勝手に使い込む事件が後を絶たない。
(中略)
こうした現状を重く見た最高裁は来年2月をめどに、
後見人が家裁の審査を経た上で必要な金額を信託銀行から引き出す
「後見制度支援信託」を導入する。
(後略)

この制度に対する、疑問とひっかかりは2点。
1つは、これじゃ対策になんないじゃん。
もう1つは、なぜここで信託銀行なのか。

問題点その1 後見人はいい人?悪い人?
この方策で一番引っかかった点は、
結局は後見人が、手続きの初めから終わりまで、
被後見人のお金にさわ(れ)る、ということだ。

家庭裁判所の指示書があれば水戸黄門、
後見人が実質的に、被後見人の財産を、自由に融通できるのだ。

これじゃ無意味なんてもんじゃない。
今と変わらないどころか、
表面上は、チェック制度を厳しくしたってのも仇になって、
もっと頻繁に、もっと大規模に、横領できる恐れがある。
どうにかして家庭裁判所の審査さえ通せば、何をするのも思いのまま。

どんなにハードを強化したって、ソフトがだめならダメなんだって。
それとも、この制度を導入すると、自動的に、
後見人は民間人でも法曹人でも、家裁も、1人残らず、いい人になるんかい。
え、どーなんだよっ。


問題点その2 信託銀行にお願いする不思議
表向きは、不正防止のため、信託銀行で、大部分の財産を凍結すればいい、
というもっともらしい理屈がついているんだけど。
最高裁判所が、民間銀行に頭を下げる図が、どうしても理解できない。

いや、どっちが上でどっちが下かじゃなくてね。
最高裁判所って公的機関だよね?
公的機関ってことは、公平なんだよね?
なんか、ひっかかる。

信託銀行だって、預かったお金は運用するわけで、
この制度が導入されたアカツキには、どれだけ預金が増えるか。

上記ニュースの数値でざっと計算すると、
10か月180件18億だから、1件あたり約1000万。
今、成年後見制度を利用している高齢者が、24,905件だから、
平成22年1月から12月まで_成年後見関係事件の概況-裁判所

ものっすごいどんぶり勘定だが、
最大約2500億円が、各金融機関から、信託銀行に、
これが、天下のお墨付きで一挙になだれ込む計算になる。
そしてここから合法的に徴収できる、1件いくらの手数料。
こりゃもうウハウハ(死語)だろうなー

そして信託契約上、財産は、被後見人から受託者に名義変更され、
被後見人は、自分の財産なのに、管理処分できなくなる。
…え? 基本的人権は?

その一方では、
改正障害者自立支援法で、成年後見制度利用支援事業が、
市町村地域生活支援事業の必須項目に、格上げしている。

こうなるともう、何もかも怪しく見えてくる。

というわけで、
疑心暗鬼のricoじいさんが、怒りに満ちて乗り込んでいったら、
もうとっくに、日本弁護士連合会と、
社団法人成年後見センター・リーガルサポートが、
すでに今年の3月の段階で、意見書をだしていた。

2文とも、冷静に怒る、というのはこういうことだ、という、
見本のような、すばらしい文章で、
まだの方は、この機会に、ぜひぜひ、ご一読を。
シビレる名文です。
↓↓↓
最高裁判所提案「後見制度支援信託」に関する意見書-日本弁護士連合会
後見制度支援信託」について-公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート


この制度は、成年後見制度の概念から、著しく逸脱している。
最高裁判所の真意はどこにあるのか。

自分トコのHPには、もはや、なかったことのようになってる、
(あるのかもしれないが、すぐには見つからない)、
信託協会にササヤカに残された、最高裁夢の痕跡はコチラ。
↓↓
「後見制度支援信託」について-般社団法人信託協会
リーフレット「後見制度支援信託」-(平成23年2月発行)

しかも、巻き込まれた形?になった、この信託協会のHP上の言い訳も、

えー、オレんとこのせいじゃないんだけどさー
なんかいろいろ時間かかんだってー
それまでこれでも読んどいてよー   ww

社会福祉士に対して、試験項目増やしてまで、
成年後見制度、やれっていうんだからさー
こっちもやるから、そっちもちゃんとやろうよー



追記
われらが日本社会福祉士会も見解を出してます。
↓↓↓
11.11.10「後見制度支援信託」の運用にあたって(見解表明)-社団法人日本社会福祉士会

みなさんとの会議で決まった通りでーす!
再度、ご異議ありませんかー?
なし!!

…って感じの文章です。