『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』 (Get Yer Ya-Ya's Out!' The Rolling Stones in Concert)
リリース 1970年7月4日
プロデュース ローリング・ストーンズ
グリン・ジョンズ
1.ジャンピン・ジャック・フラッシュ
- Jumpin' Jack Flash
2.かわいいキャロル
- Carol (Chuck Berry)
3.ストレイ・キャット・ブルース
- Stray Cat Blues
4.むなしき愛
- Love In Vain (Robert Johnson)
5.ミッドナイト・ランブラー
- Midnight Rambler
6.悪魔を憐れむ歌
- Sympathy For The Devil
7.リヴ・ウィズ・ミー
- Live With Me
8.リトル・クイニー
- Little Queenie (Chuck Berry)
9.ホンキー・トンク・ウィメン
- Honky Tonk Women
10.ストリート・ファイティング・マン
- Street Fighting Man
本作は、『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』が、イギリス盤がEP盤でアメリカ盤が擬似ライブを含んでいたことを考えると、ストーンズ初の本格的ライブアルバムと言えるだろう。
ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの11月27日、28日の公演が収録された。両日とも二公演が行われ、この四公演は録音ともに撮影も行われた。
後にピアノやギター・ソロ、ヴォーカルで差し替えやオーバーダビングが行われた。そのオーバーダビングセッションの模様の一部は映画『ギミー・シェルター』で公開されている。
ピアノは、『レットイットブリード』で主役をニッキーホプキンスに奪われていた、イアンスチュアートである。
なお、アルバムタイトル『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』は、ブードゥー教の聖歌の一節から取られたとされている。
オルタモンタの悲劇が起こったのは、MSG公演の八日後である。ビートルズ帝国が崩壊し、ストーンズは、グレイテスト・ロックンロール・バンドとして華やかに凱旋したが、ロックは理想郷から退廃した現実に引き戻されてしまうのだ。
本作はブートレグ対策としてリリースされたといわれている。1969年に公演の模様を収録したブートレグアルバムがリリースされ、かなりのセールスを上げていることを重く見たバンドとレコード会社がリリースを決断したといわれる。
また、本作は当初、サポートアクトのB・B・キングやアイク&ティナ・ターナーの演奏を含めた複数枚組のアルバムとしてリリースしたいというバンド側の意向があったが、諸般の事情から実現せず、それ以来ずっと1枚もののアルバムとしてリリースされ続けてきたが、2009年のデラックス・エディション化により、当時収録されなかったナンバーとB・B・キングやアイク&ティナ・ターナーの演奏も収録されることになった。
デッカ/ロンドンからリリースされた最後のオリジナル・アルバムとなり、次作から自らのローリング・ストーンズ・レコードへ移籍することとなる。
“ジャンピン・ジャック・フラッシュ”
MCの世界最高のロックンロール・バンドの呼び込みの後に登場するストーンズ。まずは試運転といったところか。観客の興奮も凄いが、ニューメンバーのミックテイラーが加わったバンドの高揚感も凄かったに違いない。
“かわいいキャロル”
ファーストアルバムに収録されたチャックベリーのカバー。スタジオ盤より、ややテンポが遅く設定されている。
すでに充分なオリジナル曲を有していたストーンズが、なぜライブアルバムにチャックベリーの曲を入れたのか。単なるベリーに対する敬愛だけではないであろうが、真意は分からない。しかし、チャックベリーの曲をカバーして、懐メロにならないのはストーンズだけだと思う。
“ストレイ・キャット・ブルース ”
後のストーンズのライブアルバムは、ヒット曲のオンパレードとなっていくが、当時は、ニューアルバムの発表会的な要素があった。よって本作は、最新アルバムの『レットイットブリード』の曲がナンバーの多数を占めることとなる。
ミックテイラーのリードギターの独断場であるが、テイラー在籍時のストーンズは、どちらがリードでどちらがリズムか分かるという特長がある。
“むなしき愛”
この演奏は、アルバム『レットイットブリード』が発売される前のものである。つまり、観衆はこの曲を初めて聴いているのだ。その緊張感が演奏を素晴らしいものとしている。
“ミッドナイト・ランブラー ”
約9分間におよぶパフォーマンス。ミックテイラーのギターが、自身の居場所を主張している。ストーンズに最も似つかわしくない言葉、初々しさが感じられるる。
“悪魔を憐れむ歌 ”
演奏前に「黒くぬれ!よ、黒くぬれ!よ、この悪魔達」という女性の声が聴こえるが、初めて聴いて曲に飽きた女性の声としは出来すぎ。おそらく、ダビングされたものと思う。
“リヴ・ウィズ・ミー ”
当時のストーンズには、ライブにゲストを呼ぶという発想はまだなかった。サックスのソロはギターソロに置き換えられている。後の大所帯の絢爛たるサウンドに比べ、きわめてシンプルだが、それがストーンズのレアな姿を浮き彫りにしている。
“リトル・クイニー”
この曲もチャックベリーのカバーであり、スタジオ・レコーディングはされていない。しかし、“かわいいキャロル”ときわめて似通った曲調であり、キースのギターソロはほぼ同じである。謎が残る選曲だ。
“ホンキー・トンク・ウィメン”
シングルが発売されて三ヶ月後の演奏である。その後のこなれた演奏に比べ、演奏はスカスカだ。しかし、これこそがライブであり、当時のストーンズなのである。
“ストリート・ファイティング・マン”
ほぼアコースティックだったスタジオ盤だが、そのエレクトリック盤であり、シタールやタンブラーも入っていない。それを補う為だろう、メンバーの熱い演奏が聴ける。いつも以上にチャーリーのアタックは強く、それはビルやイアンにも言える。キースとミックテイラーのギターもいつも以上に音数が多くハードである。