小麦シリーズがしばらく途切れていましたが、シリーズ6回目では小麦が脳に深い影響を及ぼすことを述べました。
米国の神経科医で米国栄養学会会員でもあるDavid Perlmutter博士が脳を老化させず健康に保つ方法として「Grain Brain」(ー穀物に侵された脳ー)という本を書き、その中でやはり小麦と脳の関係を述べています。
邦題は”「いつものパン」があなたを殺す”という過激なタイトルになっています(笑)
認知症が増加することが予想されている現今、とても参考になる本の内容と考えたので、ご紹介しようと思います。
博士は様々な神経疾患(認知症、偏頭痛、ADHD、 てんかん、うつ等)を薬に頼らず
1. 脳のための食習慣とサプリメント
2. 脳のための運動
3. 脳のための熟眠
という3点重視法で治療し、とても良い結果を出し、神経変性疾患の先駆的研究で「ライナス・ポーリング賞」も受賞しているそうです。
A. 脳にとっての良い食事とは
脳は食べるものに敏感で、遺伝的に受け入れる準備が整っていない成分を摂取しているために病気になるそうです。
本来人間の身体は低炭水化物、高脂肪の食事で生き抜いてきた狩猟採集民の遺伝子を持っていると主張します。
そして現代は、
1. 炭水化物を食べ過ぎ
2. 健康的な脂肪を口にしない
ことから脳の病気になると説きます。
小麦は白糖、グラニュー糖よりも高血糖になる食品と以前ブログに書きましたが、Perlmutter博士も同じ事を述べています。
また、小麦のタンパク質であるグルテンも現代における「毒物」と断言しています。
脳のすべての変性疾患を引き起こすのが「炎症」でその原因が高炭水化物とグルテンであるとします。
慢性的炎症が酸化ストレスとなり、生物学的な「腐食」を起こしてくるのですが、脳には痛みを感じるレセプターがないため炎症を感じることがないのです。
a. 高炭水化物→糖尿病へ
糖尿病患者は将来アルツハイマー病(AD)に罹患するリスクがない人に比べ2倍のリスクがあることが分かっているそうです。
高血糖で余った糖が糖化反応を起こし、タンパク質にネバネバとくっつきそれを変性させ、神経細胞の機能を維持している重要なタンパク質の機能を停止させ、神経細胞を変性させることが考えられます。
脳はブドウ糖の糖化反応による破壊にきわめて弱く、重大な脳組織の萎縮を招くそうです。
多くの脳の変性疾患は変性したタンパク質が神経細胞に蓄積することで起こってくると考えられ、ここに変性したタンパク質を食べるような、あるいは誘導するような行為(チンした食品、高圧高温調理によるスナック菓子、高血糖を起こす食品など)は注意が必要と推測されます。
また、糖尿病でよく見られるインスリン抵抗性があると、脳疾患に伴う脳のプラークを形成する異常なタンパク質(アミロイド)を分解あるいは排泄できなくなるそうです。
インスリン抵抗性は脳の変性や認知低下の強力なリスクファクターであると。。
悪循環ですね~~
b. グルテンに関しては
このタンパクは食べ物をフワフワにして、トロ~リ、ネバネバさせるので、アイスクリーム、化粧品、シャンプー、口紅、リップクリーム、調味料、カクテル、大豆製品などにも含まれるので注意が必要と述べています。
現代のグルテンは1万年前に人類の食事に登場したものと似ているところが殆どないとPerlmutter博士は言います。
グルテン過敏症(遺伝的にグルテンに影響されやすい人達の間で免疫反応が高い状態)は原因不明の神経疾患を抱える患者さんに共通しているし、粘膜にも影響して繰り返す口内炎の原因にもなると説きます。
グルテンは主に2種類のタンパク質グルテニンとグリアジンから構成されていますが、グリアジンに対する抗体(抗グリアジン抗体)が出来ると、この抗体は脳内の特定のタンパク質と直接結合することも出来ます。
グルテンは神経回路網のダメージをもたらし、炎症を起こし神経変性疾患に重要な役割を担っているとPerlmutter博士は強調します。
グルテンの不消化なタンパク質グルテオモルフィンは脳内麻薬レセプターに結合し、感覚的な恍惚状態を起こし、嗜癖性を引き起こすことは以前のブログでも述べました。
c. 健康的な脂肪とは?
ここで博士はコレステロールは脳の重要な栄養素であり、神経細胞にとって不可欠な燃料であり、また細胞膜の構成要素として基本的な役割を担っていると述べています。
総コレステロールの25%は脳にあり、このコレステロールは神経伝達物質の放出に直接的な繋がりがあり、タンパク質の形を変え思考と記憶を刺激するそうです。
新たな神経シナプスの成長に必要であり、脳内のコレステロールは強力な抗酸化物質であるとします。
実際、コレステロールの高い人の方が長寿であり、優れた記憶機能を伴っているという研究結果が出されています。
コレステロールは酸化したもの(油ものをチンや高温で炒めたもの)や、糖化反応を起こして変性した蛋白に結びついたコレステロールは劇的に酸化が増大され脳に利用されなくなるのです。
また飽和脂肪酸の仲間であるココナッツオイルの有用性も強調しています。
ココナッツオイルは、飢餓などの時に発生してくるケトン体の一つであるβヒドロキシ酪酸に変化し、食事に加えるだけで簡単に得られます。
βヒドロキシ酪酸はブドウ糖より非常に効率の良い脳のスーパー燃料であり、抗酸化機能を高め、ミトコンドリアの数を増やし、新しい脳細胞の成長を促すそうです。
自身の伴侶がADになり、ココナッツオイルを用い治療したところADが劇的に改善したことを米国医師が本に記しています。
不健康な油の代表はトランス脂肪酸です。
油に関してはとても複雑でわかりにくいことが多いと思いますが、
この本がとてもわかりやすく解説しているので参考にして頂ければと思います。
d. 食習慣とサプリメント
以上の重要な基本点を押さえた上で、断食、瞑想の重要性も説いています。
断食で脳のスーパー燃料であるケトン体が形成されます。
また、肥満による内臓脂肪の害(炎症性サイトカインを産生する内分泌器官と考えられる→ブログ参照)も念押しをしています。
その上でPerlmutter博士お薦めのサプリメントを列挙します。
1. DHA 最も多いのは母乳、抗炎症作用
2. レスベラトロール 赤ワイン、サーチュインI
3. ターメリック カレー粉に入っている、ウコン、クルクミン 新神経細胞を作るBDNFを増加
4. プロバイオティクス 所謂腸内サプリ 腸管は第2の脳
5. ココナッツオイル
6. αリポ酸 脳内の水組織と脂肪組織の抗酸化物質
7. ビタミンD(VD) 脳全体にVDのレセプターあり、神経伝達物質の生成などにも関わる
詳細は本を読んで頂ければ幸いです。
B. 脳のための運動
私たちの遺伝子は何百万年もかけて食料を探し求めて動き続ける状況の中で進化したものであり、定期的な有酸素運動を必要としていると説きます。
歩くことを含めた運動の脳に対するメリットは
1. 炎症を抑える。
2. インスリン感受性を高める。
3. 血糖コントロールを改善する。
4. 記憶中枢を大きくする。
5. BDNF(脳由来神経栄養因子、Brain-derived neurotrophic factor)の量を増やす。
博士は週5日、1回につき20分以上の有酸素運動を推奨しています。
(私はこの通り出来なくても、継続して運動はしています 笑)
C. 脳のための熟眠
脳は睡眠の質と量に影響されます。
1週間の睡眠不足で711の遺伝子の機能に変化が生じ、これらの遺伝子の中にはストレス、炎症、免疫、代謝に関わるものも含まれていたと述べています。
また、睡眠不足になるとレプチンという脂肪細胞から放出されるホルモンが減少してきます。
レプチンは様々な働きがありますが、その一つとして人が満腹になると放出されるホルモンでそれが減少すれば過食傾向が出てきます。
博士は7時間の睡眠時間を確保する重要性を述べ、最高の安眠を確保するための条件を述べています。
1. 規則正しく眠る習慣をつける。 子供には実行させていると思いますが、、、
2. 睡眠を妨げるものは排除する。 カフェインは午後2時以降摂らない
3. 適切な時間に夕食を摂る。 就寝3時間前がベスト
4. 不規則に食べない。
5. 夜食を摂ってみる。 夜間の低血糖が不眠の原因になるため 一握りのナッツがベスト
6. 刺激物に気をつける。 一部の食品添加物、精製炭水化物にも同じ作用を起こす物がある
7. 環境を整える。 寝室に電子機器を置かない
8. 睡眠薬は慎重に。。。
すべては実行できないにしても、この中の少しでも日常生活に取り入れられたら、あなたの脳の健康が保たれるかもしれませんd(^-^)ネ!
GOOD LUCK!
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