3時30分。
待ち合わせの本屋。
目の前には平積みされた今月の新刊が並んでいた。
私は、一冊、一冊、タイトルを流し見した。
時々、本を手に取り中を確認する。
本のページをめくっていたけど、内容は全く頭に入っていなかった。
日曜日の昼間、初めての待ち合わせ。
いつもになく緊張していた。
私はまだ、半信半疑だった。
ひろとに会えるのは嬉しい…。
でも会ってしまったら、
もう二度と離れられなくなる気がした。
全身全霊で彼を愛した挙げ句、
こっぴどくフラれる可能性もある。
私は本当にそれでいいのだろうか?
今なら、まだ間に合う。
このまま彼に会わず、帰ればいい…。
真面目な彼は、
そんないい加減な私を決して許さないだろう。
自分からこの関係を終わりにするのだ。
迷って、迷って、
本屋の入口から出かけた時…、
ひろとが現れた。
“ああ、神様…。”
嬉しいと同時に私は泣きたくなった。
日曜日の人混みの中でも、彼の存在感は圧倒的だ。
いや、本当は、ただ私が、
どこにいても、ひろとに気付いてしまうだけなのかもしれない。
ひろとがこっちに気付いた。
顔を上げて、一瞬笑う…。
だんだん、こっちに近付く…。
そして、
目の前に立った。
いつもの笑顔で笑っている。
「久しぶり」
「久しぶり~!
どこ行きます?」
「近くにお気に入りのカフェがあるから、とりあえずそこに行かない?」
「いいですよ」
言いながら、ひろとは咳き込んだ。
「どしたの?」
「今週、ずっと風邪ひいてたんですよ。
熱が39℃とか出て…。」
「マジで!病院行っ た?」
「友達に連れてってもらった。
でもずっと一人で寝てて、
誰からも連絡ないし、
誰も俺の事も心配してくれないんだって思って、
めっちゃ寂しかった。
理緒さんも冷たいし…。」
「……・・・・。
仕事は?」
「ずっと休んでる」
「大丈夫?帰る?」
「大丈夫。今日から仕事いくし。」
話ながら、
私達はカフェに向かった。