その後、一人になって、
暫く考えたが、どうしても放って置けなかった。
決心して、
私はひろとに電話をかけ直した。
「もう二度と会わないなら、
お金…貸してあげるよ。」
そう言ったのは、
貸したお金を返して貰うつもりがなかったからだ。
100万円は大金だ。
お金を渡す以上、ひろとと今まで通りでは居られないだろう…。
そう思って、
決心して電話したのだ。
そんな私の言葉に、
ひろとは即座に答えた…
「そんなのヤダ。
お金はなんとかするから大丈夫…。」
拍子抜けした。
何で?
何ともならないから、私に電話してきたんじゃなかったの?
なんとかなる位なら、言って欲しくなかった…。
お金の事を言われるのが、
私は一番嫌いだった。
独立後、
金銭的に頼れる人のいなかった私は、
全て自分で対処してきた。
その為に離婚までしてしまった。
両親には頼れなかったし、頼らなかった。
次の日に迫った、
従業員の給料を支払う為、
ヤクザ紛いの怪しげな業者から、
お金を借りた事もある。
何度も、もう無理だと思った。
でも、どんなに追い詰められても、
心を切らなければ、不安は乗り越えられた。
私には支えてくれる仲間や友人、
お店を愛してくれる人達がいた。
だから頑張って来れたのだ。
もし、ひろとに、
今そういう人が必要なら、
自分がそれになりたいと思った。
その為に関係が壊れても仕方ないと…。
真剣に悩んだからこそ、
ひろとがそこまで考えて私に頼った訳ではないと知って、
逆に傷ついた。
その気持ちは、
時間が経つと
ひろとを許せない気持ちに代わっていった 。
『今日はヘンな事言って、ごめんなさい…』
ひろとからだ。
私は無視した。
気分が悪かった。
その夜も、
『今日の約束どうする?』
とメールがきた。
『悪いけど、そんな気分じゃない』
そう返した。
私は苛立っていた。
無性に腹が立っていた。
ひろとはあの笑顔の下で、
私をバカにしていたのだろうか…
わからない。
でもこれでもう、
ひろとに会うことは無いかもと、その時は思った。