30歳で、私がオランダへ行くことになった
転機となった出来事を綴っています。
初めての方は、コチラから順番にどうぞ。
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その3 誰も知らない30歳の一大決心
その4 誰も知らない30歳の一大決心
何故か名前を聞かれた瞬間に、不思議とある名前が思い浮かんだのですが、
なんだか根拠もないし、間違っているような気がして確信もなく、逆に言うことがためらわれました。
そこで私は、Mで始まる名前と答えることで、なんとかその場をやり過ごそうとしました。
「その女性はどんな様子なのですか?」
「とても赤い・・・柱の・・・後ろ・・・で・・・表情は見えませんが・・・後姿が・・・とても悲しそうです。」
そう言葉に出したとたんに、急に胸の辺りから、本当に悲しい気分がこみ上げてきて
気が付いたら嗚咽をあげて私は突然泣き出してしまいました。
自分のことではないのに、ここまで声を上げて泣いてしまうといったことは
今までまったく経験がなかったので、何が起こったのかまったく自分でもよくわからず、
とにかく泣くのを止めようと強く思えば思うほど、逆に止まらない現象が起こっていました。
「いったい、何が起こったのですか?」
私が泣き始めてから、いったいどれくらいの時間がたったのかわかりません。
ようやく気持ちが落ち着き始め、呼吸も少しだけ深くできるようになったのを見計らって
セラピストが、そう尋ねてきました。
「子供が・・・いるのですけれど・・・私がその子を・・・育てることができないのです」
「どうしてですか?」
「理由はわかりませんが・・・その子を・・・預けなくてはならなくて・・・それが悲しくてしょうがないのです」
何が起こったかというよりも、そのときの感情があまりにも強烈だったため、
今、体にそして感情に起きていることを受け止めて理解しようと、ただそれだけでした。
どうやらその黒い髪が長い女性は、シャボン玉の映像にいた小さな子供がいるようで、
何か特別な事情があって自分では育てられないようです。
その場所は、とても赤が印象的なところで、赤い壁、赤い椅子、赤い床・・・
いたるところが濃い鮮やかな赤です。
それでも一目だけでもと、その赤い柱の影から自分の子供を見つめていて、
悲しい気持ちをこらえながらも、子供を預けて無事に育つことを祈るという選択をした女性。
それが、過去世というものにおける私なのか、まったくの別人なのかはわかりませんが
子供との別れがとてもつらいものだということを、出てきた場面を通じて経験しました。
「その場面に出てきている人たちは、現在のあなたの人生でもうすで会っている人はいますか?」
「・・・・・よくわかりません・・・・・いないみたいです・・・・・・」
当時の姿から見ても、まったく検討がつかなかったので、いいのかなと躊躇しましたが
感じるままを正直にそう答えました。
「いいですよ、いずれわかるかもしれませんね。」
「では、この人生であなたが学んだことは何ですか?」
「子供と別れるのはつらい決断だったということと、それでも愛するということです。」
ようやくいつもどおりに話せるようになった私は、最後にとても穏やかな気持ちで
そう答えることができました。そして答え終わった後に、大きく深く息を吐き出しました。
そして、セラピストの声がこの部屋に戻ってくるように促します。
「1・・・・・・2・・・・・・」
その場面からの意識が遠のき、現在の部屋へと意識が移ると、急に暖房の機械的な音が
聞こえ始めました。そして足元にあるブランケットのやわらかな感触と、暖かい部屋の空気。
電気を落とした部屋で、かすかに小さな光だけが感じられはじめました。
「3・・・・・・4・・・・・・」
手の感覚、足の感覚が徐々にもどり、少し体も動かしてみました。
とても長い間眠っていた後のような、ぼんやりした体の感覚です。
「・・・・・・5」
同時にそっと目を開けてみました。そこはオレンジ色の部屋の中で、小さなろうそくの炎が
ゆらゆらとゆれていて、光が放射状に大きく長く伸びているように見えました。
私はゆっくり伸びをして、今起こったことは夢だったような、でも話をしていた感覚は残っている
ような不思議な気分になりました。
再び暖かいハーブティーを差し出され、私はようやく落ち着いて、カップに口を近づけて
ごくりと一口飲むことができました。
しばらくの間一人にしてもらった後に、セラピストがぽつりと私に話しかけました。
「だから、子供達にかかわるお仕事をしているのですね・・・」
「そうか、たった一人きりの子供を育てられなくて、とても悲しい思いをしたので、
今は、たくさんの子供たちとかかわる仕事をしているのか。じゃぁ、今は悲しいどころか
すごくうれしい状況に私はいるのかもしれないですね・・・・」
ヒプノセラピストは、また興味があったら他の過去世や自分の小さいときも体験できること。
いつでもそうしてみたいと思ったら、また来てみることができることだけ、最後に言いました。
私はそのとき、もっと必要なのか、もうこれでいいのかどうかわからなかったので、
「わかりました、ではまた」と言ってその場を後にしようとしました。その時、
「そうだ、クリスマスなのでこれをどうぞ」
私は、ここへ来るまでに見つけた小さなお店で、手のひらほどのサイズのサンタクロースの
形をした人形のついているキャンディーを、鞄からあわただしく出して、セラピストに差し出しました。
「ありがとう・・・・」
彼女はちょっとだけびっくりしたように目を少し見開いた様子で、小さい傷がたくさんあり、
まだ包帯を巻いている少し痛そうな両手で、そっとその小さなサンタクロースを受け取ってくれました。
玄関を開けて外に出ると、12月の夜風がほてった頬に心地よく感じられました。
階段を下りて通りにでると、近くの商店街のクリスマスのイルミネーションがきらきらと光っています。
さっきまで泣いていたせいか、まだ目が涙で少し潤んでいて、そのイルミネーションの光を見ると
ちょうどクリスマスツリーのてっぺんに付いている大きな星のように、放射線状に光が伸びて見え
とても美しく感じました。あたりを見まわすとすべてのライトがまるで大きな星のように光っています。
通りに等間隔にあるライトの光る大きな星たちと、見ながらゆっくりと歩き出すと、すこしあわただしく聞こえる
クリスマスソングがさっき起こった出来事から私を、ゆっくりと現実に引き戻してくれているかのようでした。
その10 誰も知らない30歳の一大決心 ・・・・につづく・・・

