病室に到着した23時過ぎ、
横に一直線に走る心電図モニターがまず目に飛び込んできました。
20時前、父が痰がからんで気持ち悪いからコーラが飲みたいと言いました。
売店に行ったけれどもう閉まっていたので自販機でオロナミンCを購入。
飲料はトロミをつけなきゃ駄目、と言われていたけれど
ストローをさしてそのまま父の口に持っていきました。
弱々しいなりに力をいれてストローを吸い、一口飲んで言いました。
まったく…
まったく、何なんだろう? と思った途端に
美味い!
そして、そのまま1本のオロナミンCを全部飲み切った父。
この世で最後に口にしたものがオロナミンC。
買い物していて見かけると、あの日の父を思い出します。
あの時、トロミを…なんて思わず好きなように飲ませてあげて良かった。
そうしていなかったらずっと後悔していただろうと思います。
おやすみ、又明日来るからね、と病室を出てから2時間半後。
スマホに病院の電話番号が浮かんだ時に、悟りました。
それから母を連れて、ダンナさんに運転して貰って父の病室に向かいました。
母には言えなかった。
看護師さんが私に伝えた通り、呼吸がおかしいとだけ言いました。
それからの数日間、この齢では遅いくらいだけれど
初めての経験ばかりで、訳が判らないまま過ごしていたように思います。
1年、経ったんだなぁ。
早い、早い。
痩せて骨ばっていた指先の感触も、まだ私の手にしっかり残ってる。
父が居ない1年が過ぎて、明日から又父の居ない1年が始まる。
母の夢にばかり登場しないでたまには私の方にも、と思うけれど
きっとまだ泣いてしまいそうだから気を使ってくれてるんだろうな。