「な…神の弟…」

 

予想外のシレイスの答えに驚くハージン。

しかし、フェルティスだと…

またしても心の琴線に触れる名前…

 

ラリスの時同様、心の奥につかえる様なもどかしい感情が記憶の中をかき回した。

 

「そう、古代の伝えによれば、弟フェルティスは人間であったころ同じく人間だった兄を助けるために死んだ…」

 

「ちょっと待て…人間であったころ?」

「神は万物の創造主という考えを主軸に置くと、妙な事なのですが…一応、そういう風に伝わっています」

 

「じゃあ、フェルティスたちを創造したのは誰なんだ…」

「俺は神なんて信じてないけどな…うまく言えないけど、全ては誰かが作ったんじゃない。元からあったんだ」

ハージンの疑問に答えるディエマ。

 

「無から生まれたっていうのか?」

 

「そう、それだ…だっておかしいだろ?俺たちは否応なく、ここに居る。パパとママが結婚して新たな生命が生まれた…存在すらなかったはずの俺たちが…だ…それで言えば、神が神である必要も無い…誰か理由が欲しいやつが、考え出した作られた理由としか俺には思えない」

 

珍しく真面目な答えを返すディエマ。

考え込むハージンにシレイスが感慨深い顔を向ける。

 

「話を戻しましょうか…ともかく、伝記として伝わる神話にはファリエスの弟フェルティスが、兄を助けるため死んでしまったとある…それをきっかけとして、ファリエスは神の能力を覚醒させた。弟を何としても生き返らせたかったファリエスは、その方法が見つかるまでの措置として、弟の魂を神器に閉じ込めた」

 

「…それがファリエスの宝剣」

 

「そうです。この剣が魔剣と呼ばれるのは、死を許さなかった兄への復讐心がある種の呪いの効果を発現させているのではと言われている…考えてみてください…意識はあるが、体は剣…神器とはいえ、感覚があるでしょうか…つまり体の自由が利かないのと同じと考えます…正常な精神を保っていられるでしょうか?」

 

想像し、うすら寒さを覚えるハージンに、シドが言う。

 

「正常を保つ唯一の希望があるとしたら、誰かを憎む心…だろうな…ラリスは、フェルティスの復讐の為に遣わされたのが神殺しだと考えていてな…神殺しとフェルティスの間で交信が可能だとしたら、神殺しの手を借り、ファリエスにとどめをさしたのは、神殺しではなく、ファリエスの宝剣に宿ったフェルティスじゃないかって言ってた。まさかと思ったが、ラリスの仮設もあながち外れてないかもな…」

 

シドが言い終えると、難しい顔をしていたディエマが何か気づいたように声を上げる。

 

「あぁ!!もうっ!!!まだるっこしい話は置いといて、本題だぜ。ハージン、宝剣は…本当にしゃべったのか?」

 

「いや、さっきも言ったが、声を聞いたってだけで、会話は…」

 

「いいって、とにかく、剣を呼んで確かめてみようぜ!!」

「ディエマにしては珍しく、いい状況転換ですね」

 

何だと!!

分かりやすく反応するディエマを制して、シレイスが言う。

 

「では、剣を呼んでみましょう」

「わかった…」

 

           ~続く~