いつの間にか握られた見覚えのある双剣が発する黒みがかった双極の光。

 

追撃する意思…

明らかな殺意が向けられている。

 

ハージン?

腹に受けた傷を確かめる様にして見返すディエマの目は困惑に満ちている。

 

「一体、何が…まさか、本当に」

 

俺たちを騙して?

それに答えるかのように、双剣の一方が大きな弧を描いて再びディエマを襲った。

 

「ぐあっ」

 

逃げようと力を込めるが傷の痛みで体がかたまってしまう…

 

!!!!!!!!!

 

間一髪、シレイスが抱きかかえるようにタックルし、事なきを得る。

 

シレイスの手にできていたナイフの傷が癒えている。

その手でディエマの傷に治癒魔法を施し始めた。

(よかった。見た目ほど深くはないようだ)


追い打ちをかけようと思えばできたはずだが、治療を阻止しようとする意志は感じられない。

あえて様子をみるように、ゆがんだ笑みを浮かべるハージンとしか思えない人物。

 

しかし、それまでの彼からは想像できないほどの邪気を感じ、違和感しかない。

 

「ほう、こちらの世界の方もなかなかいい動きをするな…どんくさい方の俺とは大違いだ」

 

「どんくさい方の俺?」

「そうさ、まあ、神殺しである俺をさしおいて神殺しを名乗っていたようだから、偽物と言った方がいいかもな…」

「私たちからすれば貴方の方が偽物なのですが」

 

「ふん、どっちでもいいさ…俺は俺であり、偽物である奴もそうだろう。結局は生き残ったやつが本物になるのさ…」

「生き残った方が本物…ですか」

 

治癒の時間を稼ぐように一言一言確かめる様に言葉をつむぐシレイス。

あと少しでディエマの傷は完全にふさがるようだ。

イフリート化した事で魔力があがったのか、あの時よりも早く効果を得られている感じだ。

 

「では、あなたは私たちの知るハージンではない?」

「そういうことになるな…」

 

「何が何だかわからねえが、お前はぶっ倒すべき敵で、俺たちのハージンは別にいるってことでいいんだな?」

「そういうことだ」

「なら、話は早い」

 

立ち上がるディエマ。違和感は残っている様子だが、動くのに支障はなくなった様子だ。

 

「ふん、俺をぶっ倒せるとでも?」

「やってやんよ!!」

爆発剣を構えようとする一瞬の動き。

しかし、この場になって幾度目かのシレイスの待ったがかかると舌打ちしながらも、とどまる。

信頼するダチの選択を優先した形だ。

 

「まって、私たちにとって、本物のハージンはどこに?」

確かにそれを聞き出すことは必要に思えた。

しかし、ニタニタとガムをクチャるように口を動かし、

 

「さあ、どこだろうな?」

「どんな方法かわかりませんが、あなたがハージンをどこかへ追いやったのではないですか!!」

「さあ?」

 

ニタニタ

 

あくまでも状況を楽しむ様子の偽ハージン。

その表情に、これまで目にしてきたあの涙もろい面影はない。

 

こちらの世界の…

 

と言っていたように、正確に言えば偽物という表現は間違っているのだが、便宜上偽ハージンとする。

 

それにしても、二人のハージンが存在している理由とは?

今まで存在のなかった彼が元のハージンと何の衝突もなく入れ替わりえた理由とは?

 

二重人格というのは否定された形だが、ディエマや自分が気づかず、バードの怒りの目に直視された状況でどうやって…

 

得体の知れない物事への畏怖を覚えるシレイスの額には嫌な汗がにじんでいる。

 

ニタニタをやめない偽ハージン。

 

まんじりともせず、様子をうかがっていたが、ディエマが飛び込む。

 

「笑ってんじゃねぇ!!」

ガッキィイイン

ぶつかる剣と光剣

「見え見えの太刀筋だな」

「バ~カこっからだよ!!」

 

トン…

少し間を開き、爆発剣をくれてやる!!

そう思ったディエマ。

しかし…

 

!!!!!

偽ハージンはそれを読んだかのように距離を詰めると双剣を持つ手に力を注ぐ。

 

すると光剣がディエマの持つ剣を溶かすように焼き切り、真っ二つにしてしまった。

力を入れていたディエマは支えを失ったようにバランスを崩してしまう。

 

光剣が目の前に迫る。

間一髪体をねじってかわす。

 

見据える動体視力はそのままに、地面に片手を突き立てる様にして身体を旋回させて、距離をとる。

 

「くっそお、なんだその剣は!!」

 

「ファリエスの宝剣さ!!見たことないか?」

 

「馬鹿な…それはハージンの…」

「あなたも呼べる?」

 

シレイスの言葉に、初めて不満そうな表情を浮かべる。

 

「あなたも?それは、どんくさい方の俺とのことを言ってるのか?」

 

「そうだよ!さっきから、似てるなとは思っていたが…ハージンの剣だぞそれは!!どうやって…」

「聞き捨てならないな、これは俺の剣だ」

 

「あなたの…」

 

言いかけ、言葉を切るシレイス。

怒りの表情で地面を踏みつける偽ハージン。

 

「どうりで、呼んでも来ない時があったわけだ!!あの野郎!!」

 

ハージンに向けられたように聞こえる内容だが、

この時、彼の心の中にある声に耳を傾ければ、あの野郎の意味が変わることに気付けるだろう。

 

(いったいどこまで俺と同じ能力を与えた…)

 

偽物でもなく、まるで二つの並行した世界があるかのような言いようの偽ハージン。

 

しかし、今シレイスたちが注目すべきは彼ではなく例の土煙であった。

 

スーパーノヴァ…

 

偽ハージンが言うように同じ能力を持っている彼にとって、シレイスたちを全滅させるなど、容易い事だったのだから。

 

先程から起こっている不可解な現象…

それは、彼らの運命を大きく変えていく。

 

           ~続く~