秀と愛来が向かっている場所。

 ‟伊勢谷生体理化学研究所”

 人目をはばかるように、森の奥深く建てられたその場所には、地獄絵図ともいうべき光景が広がっていた。
 一目でそれと分かる血だらけの死体が、孤立している建物に、更に孤立感を与える広大な庭のいたるところに転がっているのだ。
 その死体から延びる血のしぶきの様な赤黒く染まった箇所をたどっていくと、一人の男が歩いている。

「クック、やっと入れた…」

 杉だ。
 手には例のナタ…
 返り血の跡が、それと分からぬほどスーツを赤く染めている。

「親父…」

 誰にともなくつぶやく彼は、建物の玄関ではなく、その奥の、離れのような別の建物へと歩みを進め、入り口の鉄製のドアに、電子ロックがあるのを見て叫ぶ。

「おのれ~忌々(いまいま)しい!!!」

 しかし、次の瞬間、電子音とともに、扉が開くと、彼は戸惑いを浮かべつつも、中へと入っていくのだった。

 数分後、壁につけられたわずかなランプの明かりしかない、長くて薄暗い、まるで深淵に続くような螺旋階段をへて、彼はとうとうたどり着いた。

 自らを苦しめる元凶の元へ…!!!

「とうとう来よったか…NO4480」

 杉の前には、あの下半身が無数のコードとつながった老人がいた。

 その頃、秀と愛来は同じ場所へとたどり着いた。

「おい、これって、アイツの車じゃ!?」

 杉の乗っていた車をみて、驚きの声をあげる秀。

「変やな?なんで、外にビル(車載AIの名前)が…って、なんや!!何が起きとるんや!!」

 庭に広がる惨状に驚く愛来。
 しかし、横にいる秀は、言葉を発せられずにいる様子。

「…………こ……」

 一瞬にして咽喉が、カラッカラに渇いたような、何とも言えない音?を絞り出す秀。

 ゴクリ…

 唾を飲み下して、やっとだした言葉は、異常な光景を、更に異常なものにする。

「お…れ…俺が死んでいる……!!!」

 そう、転がっている死体全てが、秀と同じ顔だった。



 …続く。