「当たり?」
優莉(ゆうり)の、リヴンを消そうとしたのは審判者では無いかという推察に対して、僕が訪ねると、リヴンは、あぁそうぢゃ!と言って愚痴りだした。苦しそうにしていた割りには、結構余裕がありそうだ。
「奴はワシを伝令係ぐらいにしか思っとらん!!以前は奴もワシと同じように、呪いをかけた相手に説明しておったが、ワシを使うようになってからは、今のように、遠くから時折、様子を見ておるだけぢゃ!もともと奴のやり方は、心の中に話しかけて、姿は現さぬというモノぢゃったからワシが消えても痛くも、かゆくも無いというわけぢゃ。本当に消されるかと思ったぞい!助かった!」
リヴンは優莉に向かって、お辞儀した。お辞儀する鳥なんて初めてかもしれない…
「どういたしまして…」
優莉らしい、控えめな返事。
「本当の気持ちぢゃよ。真に有り難いわい。それに比べて、お主と来たら…!!」
今度は僕の方に向くと、指差しというか、羽指し?凄い勢いでまくし立てる。
「全く考えが足りぬというか、何と言うか!!やはり、最初に感じた通り、優莉殿は賢くあらせられる。ワシが見込んだだけの事はあるわい」
「そ、そんな…」
照れる優莉。ムッとする僕。
「あ~~~はい、はい!どうせ僕はバカですよ!!解ったから早いトコ、二人っきりで話し合いたいね。お邪魔虫さん」
ワザとそう言ってみる。まだ有りそうだが、今はもう聞く事が見当たらない。
「何ぢゃとぉおお…!!っとと、ワシとした事が、またしても、おぬし等のペースに翻弄されるところぢゃわい」
そう言って腰に手?を当てる。鳥が威張った格好なんていうのも初めてだ…
「言っとくが、ワシを怒らせぬ方が身の為ぢゃよ?先程は油断したが、ワシにはテレポートがある。お主に指一本触れさせずに勝利するなど容易(たやす)い事なんぢゃからのう…」
ニンマリと笑った気がする…
「ひ、卑怯者…!!」
「ま、実力というヤツぢゃて…ふぉおっふぉっふぉ」
「~~~~~~~~!!!」
悔しくて地団駄を踏むと車が揺れたので止める。
「そう、カッカしなさんな。望みどおり邪魔者は消えるでの…」
何?何所行く気だ?僕は慌てた。
「まぁ、何時でも困ったときは呼ぶが良い…リヴン、カサフルレとな…さすれば、出現しよう」
「リヴン、カサル…!!?お、おい!!待て!ちょ…!!」
僕らが呼び出しの呪文を憶えたかも確認せずに、今度は自らの意思でリヴンは、かき消すように消えてしまった!!車から降りて探してみるが見当たらない…
「参ったな…あいつ、こっちが憶えたかどうかも確認せずに行っちまいやがった…」
頭をかきかき、悩んでいると、
「リヴン、カサルフレ!!」
さっきと微妙に違う響きの呪文を唱える優莉の声がした。その瞬間。ワザとなのかどうなのか、僕の目と鼻の先位に突然、鳥オバケが出現した。
「う、うわぁーーー!!」
思わぬ事に、後ろへのけぞって、よろけてしまう。
「び…び…ビックリするだろぉが!!オイ!!」
心臓がドックンドックンゆってる!!
「ふぉっふぉっふぉ…悪いのぉ~~♪」
絶対に悪いとは思っていない…
「今呼んだのは優莉殿?」
デカ鳥に、えぇ…と優莉が答えるや否や、ジジくさい鳥は優莉の顔に抱きつく…ま、手でなく羽なので、ヘバりついたとも言えるが…
「もがが…」
優莉が息苦しそうな声を上げるのを無視し、鳥は続けた。
「おぉ、それ程まで…心に隙間風が?この様なジジ鳥に…?」
あ~あ、自分で言っちゃった。
「じぃは、じぃは感激です!!」
息苦しそうな優莉に構わず、益々しがみついたジジ鳥に、僕の足蹴りが飛ぶ!優莉の顔に衝撃が行かないように、寸止めぐらいで軽く延ばした足は、よけられると思ったが、なんと当ってしまう!!
「何をする!このトントンチキ!!ワシが避けていたら、今頃優莉殿の顔は…」
「何受けてるんだ!!避けろバカ…!!どけ!!」
リヴンをどかすと、案の定、目を上に向けて、口を大きく開き、初めて見る間抜けな顔で放心している。
「大丈夫か優莉!!」
言いかけるが、股間に衝撃が走り言葉につまる…!!男特有の痛みに股間を抑えて、横倒しになり悶える僕に、優莉が怒りをぶつける。
「人の顔を足蹴にした報いよ!!フン!!」
ごもっとも…いでぇええ!!
暫くして股間の落ち着いた僕は、謝り倒して優莉に許してもらった。彼女的には、絶対許せないが、これからの事を踏まえ、仕方なくではあったっぽいが…
横目で鳥オバケを睨みつける。一騒ぎではあったものの、誰にも気づかれなかったようだ。こんなデカ鳥を目撃されたら…いや、でも、ぬいぐるみと思うかな…
横目で鳥オバケを睨みつける。一騒ぎではあったものの、誰にも気づかれなかったようだ。こんなデカ鳥を目撃されたら…いや、でも、ぬいぐるみと思うかな…
「これから、どうしよう?」
優莉が聞いてくる。
「ま、一先(ひとま)ず、家で過ごすがいいぢゃろう…」
「簡単に言うなよ…」
「さっきも言ったが、そんなに心配する事は無い。堂々としておれば意外に上手くいくはずぢゃ」
だから…と言いかけた言葉を優莉が消す。
「いいわ。リヴン。昨日、今日と気づかれなかったんだから、そうしましょう」
不満顔の僕に優莉は続ける。
「信じられないけど、結構上手くいくよ?とにかく、今は状況に慣れて、事実を受け入れる事。それから考えましょう。まだ一週間あるわけだし…ね、貴璃斗(きりと)」
結局、今考えてもロクな考えが浮かびそうに無いので、渋々了解して、彼女を送り届ける事にする。
彼女の笑顔に誤魔化されている感情を、僕は読み取れずにいた…いや、結局はまだ、自分を保つ事で精一杯で、他人の事を気にしている余裕も無いのだったか…
後々、彼女が追い詰められていた事を知り、後悔する事になるなど思いもせず、僕は車を発進させた。