このブログを立ち上げて九日が過ぎました。いろいろな人の記事を読ませていただき、自分のはかなり地味なんだなぁと思い当たりました。何とか紙面を充実させる方法は無いものかと、色々考えましたが、地道に増やしていくより方法は無いみたいです。でも、考えたおかげで、今、猛烈に書きたいものがあることに気付けたのでよかったです。今日突然閃いたのですが、以前から、バイクを題材に何か書けないかとは思っていたもので、本当に力が入ってます。あ、勿論、徹平と夏輝の方も、練りに練って書いていますので、勘違いしないで下さいね。連載第二弾といっても、平行して書いていく事になるとは思ってなかったので、ちょっと勇気が要りますが、面白いものに仕上げていけたらって思ってますので宜しくお願いしますね。
 さぁ、それでは力入りまくりの初回いってみましょう!!

{KAZEキリ} 第一走

 どうやったら追い抜けるのか、秀(しゅう)はひたすら、それだけを考えていた。兄、駿(しゅん)の背中は見えている。同じラインをとり、全開のマシン。60度コーナーを滑るように、すり抜けた兄のマシンのラインの内を取ったはずだったが、ターンしそうなほどスライドするマシン。焦る秀の考えに反して砂と粉塵を巻き上げ、白煙の中、秀のレース用バイクは止まった。
 秀の横を、1,2,3,4…次々と走り抜けていく。兄、駿の姿はもう無い。たまらず、声に出る。

「くそ、ボロタイヤが!!」

 ここは、サーキット。自然林の景観のまぶしい中に、かたどられた円周の敷地内にウネウネと走る舗装路。そこに、目算でもおよそ50台のバイクが走っていた。”スサノシルバーズカップ”と書かれた垂れ幕が見える。日付は今日。バイクのレースが行われるらしかった。

「さすが、スーパーライダーの弟ってところか…途中まで完璧にトレースしてたぜ」

 ピットインした駿にチームオーナーの鹿毛(かげ)が声を掛ける。メットを取りながら、駿は返す。

「僕より速いかもね」

「冗談。最後ターンしそうになったのは、明らかにライン取りを間違えてた。アウトインアウト(コーナーを曲がる際、マシンを外のラインから中のラインに近づけ、遠心力で外に膨らみながら抜けること)が基本なのに、アウトインで更に中突こうってんだから、危ないよ。倒しこみすぎて結局、道端の段差につかまって危うくキミを巻き込んで転倒するところだったんだ!あれは注意しといたほうがいいぞ」

「ご忠告有り難う。でも、成功してたら、抜かれてた。闘争心あった方がいいんじゃないですか?」

「おいおい、今日走るライダーを危うく、失うところだったんだ。他のチームにだって当てはまるんだぞ!ただでさえ、登録もしてないライダーを走らせてて、冷や汗モンなんだ。これ以上問題は起こさないようにしてもらわないと…!!」

「練習走行でしょ?無茶な走りしてんのは、僕と秀ぐらいのもんですよ」

「しかしだなぁ…」

 尚も食い下がる鹿毛だったが、そこへスタッフが慌てて走ってきて伝えた。

「駿!弟さん、ピットインせずに行っちまったぞ!!」

「なんだって!」

 倒しこんで曲がる。兄貴と同じタイミングでつっこむ。そして、ここだ!秀はさっき滑って停止したコーナーに再度チャレンジしていた。
 上手くコーナーの外側から中をフックでもかけているかのように、マシンを滑り込ませていく。クラッチを切って、駆動を止め、ブレーキング。滑るタイヤが危うい線を刻み込んでいく。コーナーの出口が見える。この角度だ!視界が地面すれすれのところから持ち上がってくる。アクセルを開け、マシンに命を吹き込んだ。倒れたマシンがムクリと起き上がり、吹っ飛ぶように前進し、加速を高めていく。ラインギリギリ、段差につかまる事無く、マシンは綺麗に全開シフトで、コーナーを抜ける。秀の全身に、言いようの無い感覚が走る。血がざわめくとでも言おうか、血の気が引く時と似ている。ともかくも、頭の芯にくるような衝撃が駆け抜ける。
ギュオォオオオーバーッ!!!
 再びピットコーナーを無視して、スタートラインを越えると不意に聞きなれた音が後ろから近づいてくる。

(きた!兄貴だ。来ると思ってたぜ!)

 ニヤリと、口元は見えないが、表情に出ている。もう一度勝負だ兄貴!だが、そんな秀とは対照的に、駿は早く止めなければと思っていた。

(秀!!気付け!!!気付いてくれ!!!お前の乗ってるマシンのタイヤはもう、終ってるんだ!!)

 危険な領域へと二台は加速していく。運命は、変わることなく、時を刻み続けていた。

                      ~第一走 了~