「ふぅ…」
ホッと息をはくシレイス。
「よかった…」
かけよるディエマに微笑み返すシレイス。だが、返ってきたのは、
「よかったじゃねぇ!!自分の恰好見てみろ!!」
言われて気づく…
何も着てない…
固まる…沈黙
「なっ…えぇえええええ」
驚くシレイスにジェスが腰に巻いていた帯を外して渡す。
それでも、何をすべきか解ってないシレイス。
隠すべき男のシンボルをさらけ出したまま固まっている。
「早く巻け!!」
ディエマの指摘でようやく事態を受け止める。
そう、すっ裸…だったのだ。
細胞レベルでの変身なのだろう。
着ていた服は炎とともに燃え尽きたようだ。
だとすると、オリオストとの戦いの際、ハージンは肉の塊から服まで再生した。
まるで、時をさかのぼるかの如く…
変身と巻き戻し…
それとも、再生なのか…
ハージンの行使する魔力は何なのか…
やはり、ハージンの能力は異質なようだ。
さて、話をもどそう。
恥ずかしい状況に気づき、急いで腰布を巻くシレイスだが、ギリギリ隠せているといった具合だ。
「!!!!シレイス…それ…」
慌てるディエマの声で股間を確かめるシレイス。
そんなシレイスに眉をひそめて、
「違(ちげ)ぇよ」
と指さすディエマ。
指さすその先にいまだ残るイフリートの表皮。
「うん?」
気づくシレイス。
左の額から目にかけてイフリートの化身は解けていなかった。
再び魔力をまとわせた手で触れるが何も起きない。
「………………」
手触りで化身の解けない事実を確認し、押し黙るシレイス。
「く、暗くなってんじゃねえよ!ま、魔力が足りねえだけだろ?」
あきらかに作り笑いだとわかるぎこちない表情を浮かべながら、
「今日だけで、どれだけ魔力開放してるんだっツウの」
必死な表情のディエマに自然と笑みが浮かぶシレイス。
それを見てホッと一息吐くディエマ。
「確かに今日は使いすぎですね」
「だろ?」
言いつつ、ハージンの視線に気づくディエマ。
「な、なんだよ怖い顔して…」
なおも刺すようなまなざしを向けるハージンは物言わず指さす。
そこには、両手で顔を覆ってしゃがみ込むレナンの姿があった。
「あ、レナン?」
ディエマと同じく気づいて謝ろうと口を開きかけたシレイスだったが、ディエマの余計な一言がそれをさえぎる。
「もしかして見ちまった?」
からかうように意地の悪い顔で近づくディエマ。
まったく、デリカシーのかけらもない…
「見たんだシレイスの……!!!」
パッシィイイイィン!!!
少女レナンの一撃が、戦士ディエマのほっぺたにクリティカルヒット!!!
「いっでぇえええ!!!なにすっだぁああ!!!」
「こっちのセリフよ!!!バカ!!」
ほっぺたを赤らめながら叫ぶレナン。
それが怒りによるものか、シレイスの裸を見てしまったからなのかは、村の皆が止めに入らなければ、確実に一人のデリカシーを欠いた一人の男の命が失われるのではないかと思えるほどの取っ組み合いが始まったせいで確かめることはできなかった。
数時間後、
「おい、大丈夫なのか?」
ハージンの問いかけにこたえるシレイス。
服が調達できたのか、裸に腰巻ではなくなっていた。
「何がです?」
「ディエマとレナン…」
言ったハージンの視線の先に、再びボッコボッコになった顔でシチューを食べるディエマとその隣で機嫌悪そうに横に座るレナンの姿がある。
先ほどの剣幕を考慮すれば二人きりにするのは危険なのではないかとハージンは言っていた。
しかし、
「あぁ、いつもの事ですから」
「いつも?本気で息の根を止めに行ってた気が…」
本気で心配するハージンに微笑むシレイス。
「いや、本当に」
「危なっかしく思えました?」
こともなげに言うシレイスに拍子抜けするハージン。
「何も知らずに見たらそうでしょうね?」
何も知らない?
「そうです。今でこそバードもいて、あぁいう一面も見せるレナンですが、バードが行方知れずだったころ、レナンは我々に心を開くことはなかったといえば、どうです?暗くうつむき、人と目を合わせようともしなかった…それを徐々に変えていったのがディエマなんです」
~続く~