料理教室&BistrotRIANTのメールマガジンです。
料理人・川名克典の料理セミナーでは伝えきれない
技術の裏に隠されているものを書いています。


それは、料理と人生をおいしくする秘密そのもの・・・。



  いきなり冬が来た。
  昨日から寒くなって来たなと思っていたけれど、夕べは冬を感
  じるほど・・・。


  何もかけないで寝る僕でも・・・。
  (かけて寝ても朝にはないから)
  毛布をとりだしていつの間にか抱きしめて寝ていた。


  勿論、朝に毛布は足元で丸まっていることを予想しているから
  フリースのスゥエットを身にまとっていた。
  お陰様で風邪をひかない。
  寝起きにほんのり身体が温かいと感じるのがいい。  
  

  睡眠時間の短い僕にとって、寒くて眼が覚めるのは何とも避け
  なければいけないから、そろそろ気を付けないと・・・。
  ただ眼が覚めなければきっと風邪をひくのだろうから、それは
  風邪予防に悪くない。



  子スズメ達が窓の外にわんさと押し掛ける。
  雨で餌を見つけられないのだろう。
  プランターの中にまいた、インコの餌を「おしくらまんじゅう」
  しながら食べている。


  幼稚園の庭で子供たちが騒いでいる様なものだ。
  子供嫌い、小鳥嫌い、小動物嫌いには耐えられない光景かも知
  れない 。
  好きになれば、これほど愛しいモノは滅多にない。


  そんな風に思うなんて年をとってきた証拠だ。



  ついこの間始まった九月の料理教室も残すところ後二クラス・・・。
  楽しい料理だった。


  身体にもいい。
  見た目もお洒落。
  作って簡単。
  手順通りならほぼ同じに出来る。


  マニュアルで料理を作ることが嫌いな僕が、そのマニュアルを
  毎月作っている。
  これは、もの凄く変なことだ。

  その変な事を、僕は十八年も続けている。
  
  人生は全く不思議だ。

  やろうと思ってやったことでも、目標にしたわけでもない。
  それでも、それが僕の人生になり僕は納得している。
  出来上がったマニュアルに、自分で妙に微笑んでいる。


  巧く描けた絵のように、自分で遠目に眺め目を細めるのだ。



  曖昧とした感性で作った料理がこんなに簡潔に・・・。
  箇条書きになってゆく・・・。

  ついさっきまで、これは空気のような、つかみ所のない僕の頭
  のどこかに隠れていたモノなのに・・・。

  
  職人が大切にしているモノは、その空気のようなモノだろう。
  それは、突き詰めると「自分」と置き換えてもいい。

  だから「マニュアルになどできるものではない」と言う。
  だから「教えることなど出来ない」と言う。

  だから、本当に教えられないのかも知れない。
  意地悪とか、職人根性とか、嫌なイメージではなく・・・。



  自分自身なのだから・・・。
  出来ないという方が普通かも知れない。


  そう思えば、その性根と言われているモノは、結構愛しい。
  愛したい気がするけれど・・・。
  それは、僕が職人だからか・・・。
  それは、僕が僕だからか・・・。

  

  ふと思う。
  僕はそれを目標にしたのだろうか?

  料理職人の仕事が無くて、たどり着いたところで出逢った仕事
  だったのではないか?



  今沢山のセミナーで、声高に叫ばれている「目標を持て・・・」
  「ワクワクすることをしよう」と言う言葉。

  僕も子供たちに言ったりするけれど、僕自身マニュアルを作る
  仕事を目標にしたことはない。


  料理人になろうとは思った。
  でも、「ワクワク」など無かった。
  どちらかというと「ビクビク」な毎日だった。(笑)
  多くの会社員と何ら変わらない。



  で、十年やってどうにか料理人になったけれど仕事がすっかり
  無くなっていた。

  バブルがはじけて、フランス料理屋を開く人達が消えたのだ。
  幸か不幸か・・・。


  えっ?今思えば「幸」だ。
  もし、その料理長職にありついたとして、バブルを土台とした
  店に御世話になったとして、遅かれ早かれその職を失ったはず。


  そして僕は、生きるため、喰うために、給料をもらうために・・・。
  あの時、目の前にあった料理教室という仕事にしがみついた。


  「いつ辞めてもいい」
  「此処で働かなくてもいい」と・・・。


  NY経由巴里帰りの僕は、肩で風を切ってうそぶいた。
  


  決して夢とか、ワクワクとか、目標ではなかった。
  動機はたった一つ。

  「金を稼がなければ生きて行かれない」


  今、多くの会社員の方が目標を持とう、夢を持とうともがいて
  いるけれど、持てないのに題目だけ作ったって・・・。
  しばらくして、モチベーションが下がったら消えて無くなる。
  そして、毎日同じ作業の繰り返しになる。


  「職人っていいですね」といわれることがある。

  その人達の殆どは、解っていない。
  夢や目標は題目ではない事を。


  職人の毎日は、野菜を洗うこと、刻むこと、出汁をひくこと、
  肉や魚をさばくこと・・・。
  そして延々と続く洗い物だ。


  店内に掃除機をかける・・・。
  何十枚もある布巾を洗う・・・。

  すのこをあげ、床をブラシでこすり、ゴミのたまった排水溝を
  掃除する。


  したたり落ちる汗でオーブンの中を磨く。


  サービスの者がいなければ、お客様に自分で作った料理を自分
  で運ぶ。
  頭を下げて「自分自身を試して頂く」のだ。
  会社でお茶を配るとき、そんな気持ちで配れるだろうか?



  鉄人達に聴いてみるとよい。
  あのTVで放映されている姿が職人なのか否か。


  僕は思う、目標もワクワクも今目の前にあることを、目一杯、
  これ以上出来ないと言うまで・・・・。
  これだけやれば、これで死ぬならそれも良いと思う程やった時、
  自然と神様から与えられる。


  セミナーに行って、箇条書きにして、マインドマップを書いて
  目標が生まれる人もいるのかも知れない。



  でもそうじゃない人は・・・。
  今を精一杯やったらどうだろうか?


  生きるためでいい。
  喰うためでいい。
  金を稼ぐためでいい。


  それが一番、自分が納得できるはずだから・・・。


  そうしたら、必ず探しているものが見つかる。
  そうしたら、必ず自分がみんなの為に出来ることを見つける。
  そうしたら、必ず生きる醍醐味を見つける。



  僕は今、自分で全く好きではないマニュアルを作るときに生き
  がいを感じている。
  そのマニュアルが・・・。

  りあんに集まる人達とその家族、友人を幸せな気持ちする事が
  解ったから。


  もしかしたらそこに集まった人の家族、子供たち・・・。
  三十年後のどこかの食卓・・・。  


  りあんで料理を学んだ方が米国でそのマニュアルを紐解いた。
  りあんの料理はどれを作っても大好評だと手紙が来た。


  三十年後世界の何処かで、僕は僕の料理の末裔と出逢うかも知
  れない。
  


  そうしたいからそうしたのではない。
  幸せになりたいから幸せになったのではない。
  僕が喰うために精一杯作ったマニュアルが、誰かを幸せにして
  いる。


  「それが解ったから」僕が幸せになった。  
  

  それは、料理人でも会社員でも主婦でも・・・。
  タクシードライバーでも、ダンプの運ちゃんでも・・・。
  交通整理の警備員だって・・・。
  保険の営業マンだって・・・。

  同じ事だと思う。
  
  迷うことはない。
  今日、目の前の事を精一杯やらないか?

  そして、耳をすまして聞け。
  そして、刮目して見ろ。


  必ず君の仕事を喜ぶ人がいる。
  それは目の前にいないかもしれない。
  ずいぶん遠いところにいるのかも知れない。

  僕のマニュアルも米国まで行ってしまった。
 

  でも、それが解った時から・・・。
  でも、それを感じた時から・・・。

  本当の君の人生が始まる。
  そこが、幸せの本拠地だ。

  

  沢山悩んだだろう?
  沢山苦しんだだろう?



  もういいだろう?
  そこへ行けよ。  
  



今日も、新しいインスピレーションを求めて・・・。
引き寄せる一日でありますように。 (^ー^)v


そして・・・

いつも 「ありがとう」

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