料理教室&BistrotRIANTのメールマガジンです。
料理人・川名克典の料理セミナーでは伝えきれない
技術の裏に隠されているものを書いています。
それは、料理と人生をおいしくする秘密そのもの・・・。
「野菜を使って何か、サラダじゃなくて・・・」
時々こんなオーダーが入る。
・・・・。
佳生は、今、店にある野菜を思い出す。
店の外にあるのは、段ボール箱にジャガ芋、玉葱。
プランターに、イタリアンパセリ、バジル、ミントが植えてある。
キッチンの冷蔵庫は・・・。
キャベツ、人参、生椎茸、しめじ、エリンギ、にんにく・・・。
マッシュルーム、エノキ、トマト、胡瓜、グリーンカール・・・。
ルッコラ、長葱、生姜、香草、・・・。
特別な野菜があるわけではない。
野菜料理を主体に作っているわけではなく、野菜メニューがある
のでもない。
何時も似たような野菜しかなかった。
もう一度野菜を思い返す。
料理名を思い出すのではなく、野菜を思い出すのだ。
キャベツ、きのこ・・・。
ちょっと心にひっかかる野菜を取り出す。
次にキャベツを茹でる、蒸す、焼く、揚げる、そのまま・・・。
と想像する。
サラダじゃないから、「そのまま」を削除する。
「焼く」のは野暮ったいから削除する。
茹でると、多少でも旨味は逃げる。
「なるべく旨味を残したい」と思った。
一品決まった。
「キャベツ蒸し」
次に椎茸を思った。
もう一度椎茸を思った。
一品決まった。
「椎茸の網焼き」
ついでにしめじを白ワイン少々で蒸して置いた。
逃げ道だ・・・。
アルバイトの川瀬が佳生の手元を見ていた。
そこで佳生は彼に尋ねた。
「野菜以外のものを使っていいのかな?」
彼は答えた。
「はい。野菜が多いならいいそうです。但し、サッパリ系で、
血の滴るような肉や、ソースものの煮込みじゃなければ・・・」
佳生は、フランスへ行く前一緒に仕事をした先輩を思いだした。
「オマール」・・・。
彼は、オマールをキャベツで包む料理を作っていた。
それを思い出したのだが、今オマールが手元になかった。
ふと、冷蔵庫に鶏のささみが数本あることを思い出した。
急いでとりだし、強めの塩をした熱湯でブランシールした。
※ブランシール;表面が白くなるように茹でこぼす。
ほぼ平行作業でやったのでそれぞれの食材はまだ温かった。
佳生は、由香がまかないの時に海苔巻きを作ってくれた事を
思い出した。
まきすを取り出すと熱湯で温めた。
水分を拭き取るとオーブンシートをその上にのせた。
蒸したキャベツを広げた。
椎茸を並べた。
グロセル(粗塩)を引きながら散らした。
ちょっとだけマスタードを置いた。
ミディアムレアにブランシールしたササミを並べた。
黒胡椒を粗挽きにして散らした。
もう一度椎茸をのせた。
まきすとオーブンペーパーを人差し指で押さえながらキャベツで
中身を巻き込んだ。
クッと両手で絞めたら野菜の汁が出たので力をゆるめた。
まきすをはずしオーブンペーパーの両端をたこ糸でしばって、
ブーダン(太いソーセージ)の形にした。
キャベツの巻物は、そのままオーブンに入れて保温した。
佳生は今度は、祖母が作っていたロールキャベツを思い出した。
「トマトか・・・」
急いでトマトを湯むき(熱湯に数秒入れ皮をはぜさせる皮むき方)
し、ザクザクとカットした。
ふと、仕込み中に古いシャンソンを口ずさんでいた、チーフを思
い出した。
ニンニクとトマトだけで旨いソースを作っていた。
キャベツを蒸した小鍋にトマトを入れ煮込んだ。
「あっ、最初にニンニクを炒めるのを忘れた・・・」
ニンニクとブロックベーコンを小さく刻んで少量加えた。
ニンニクの香りがしてきた。
そして、ベーコンの塩が丁度よく出たフォンデュ・トマトが出来た。
温かい皿をテーブルに置いた。
熱々のトマト・フォンデュを皿の真ん中に少し置いた。
オーブンからキャベツのブーダンを取り出した。
包丁をオーブンペーパーの上から入れた。
まな板の上に、丸いモザイクが一切れ倒れた。
小さいモザイクを3切れ切って、オーブンペーパーをはずしトマト
の上にのせた。
「サッパリ系」という注文だった。
先月、チーズセミナーを開いたときにゲスト講師を御願いした
オリーブオイル屋さんの顔を思い出した。
その時、仕入れたギリシャのオリーブオイルを軽く振りかけた。
一皿の料理に、忘れられない人達の顔が並んだ。
出来上がった料理をちょっと眺めた。
この一皿が愛しい。
「愛される料理・・・」
小さくちぎったセルフィユ、ディル、タイムの葉っぱが佳生の右の
掌からハラハラとその一皿に落ちていった。
刹那、
彼は、子どもの頃暮らしていた札幌を思い出した。
しんしんと降り続ける雪を、曇ったガラス窓から見ていた。
子供ながらに、恐れと美しさを感じた。
もう雪が降っているだろう。
川瀬が料理を持っていった。
「元気ですか?」
佳生は、彼の背中につぶやいた。
今日も、新しいインスピレーションを求めて・・・。
引き寄せる一日でありますように。 (^ー^)v
そして・・・
いつも 「ありがとう」
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