料理教室&BistrotRIANTのメールマガジンです。
料理人・川名克典の料理セミナーでは伝えきれない
技術の裏に隠されているものを書いています。


それは、料理と人生をおいしくする秘密そのもの・・・。



  おはようございます。



  長女から「轍(わだち)」って何?と聞かれました。
  最近彼女が聞いている、CDの中の歌詞に出てくるそうです。
  (どうもKOBUKUROというアーティストらしい)


  へぇ~。なんか今にしては難しい感じの地味な言葉をよく唄に
  しているのだなと思いました。(これっておじさん調?)


  「轍」
  舗装道路から離れない生活をしている彼女にとっては、滅多に
  遭遇するものではないですから。



  それは・・・・・。


  「轍を残した車輪は、さまざまに変化してきました。
   牛車、馬車、人力車、自転車、自動車・・・・。

   土の道が舗装されていくに従って、轍も残らなくなった今
   この言葉も消えていくのでしょうか。」
           =山下景子=「美人の日本語」より抜粋
   

  僕は、土建屋稼業時代に、舗装されていない道なき道を
  走ってきましたから・・・・(笑)
  「轍」をどう扱うかが、腕の見せ所であったわけです。


  そんなとき、僕の身体中は緊張と躍動で一杯になりました。

  そして、そんな心地よい緊張感に慣れてしまうと整備された
  舗装道路など、ただ眠くてあくびの道だったのです。(笑)


  轍「わだち」を「てつ」と読むと、「同じ轍は踏まない」という
  言葉が出てきます。


  でも、雪道や、泥の工事現場では、違いました。
  同じ轍を踏んでこそ上手く辿り着いたのです。
  なまじ違う轍を作ろうとすると、途中で立ち行かなくなったり、
  ・・・・・・。



  一生忘れられない、火のついた導火線のような・・・。
  それも、いつまで続くのだろうと長く感じた、そして祈った、
  一瞬間を経験しました。


  土建屋稼業で手に入れた青いランクルで冬は南志賀にある
  知人のロッジへ居候(バイトの報酬としてスキーができる)
  によく通いました。


  あるシーズンの帰り道。


  南志賀の山(熊の湯の裏側)を須坂方面へおりた僕は、左折して
  菅平へ向かいました。
  登りは、四輪駆動ですから何の問題もなく・・・・。


  菅平のスキー場を左手に見ながら通り抜け山を下る道に入ります。
  少し溶け加減の汚れたかき氷の様な轍(わだち)でした。


  太陽が当たっている場所は、そうでもクネクネと曲がった日陰は、
  しっかりと凍った固いボブスレーのようなコースです。


  いくら四輪駆動といっても、チェーンやスパイクではなかった
  ので、この轍を噛むことも、壊すことも出来ません。
  こんな時はこの轍にそって、走るのがルールです。


  その時、三十メートル先の曲がり角から、バスが顔を出し始め
  ました。
  バスはゆっくりと右折して、徐々にこちらをむき始めました。
  そして、ついに、まっすぐに僕と向き合ったのです。


  僕は徐々に下りて行きました。
  向かい合って後十メートルですれ違うだろうその時・・・・。
  僕は、やはりこのままでは車の右側がお互い接触すると感じ
  ました。


  僕はハンドルを左に切りました。
  轍からホンの少しだけ、、タイヤ一つ分左に寄ろうと・・・。


  その瞬間。


  今までハンドルにかかっていた車重が消滅し、車は左へ左へ回転し
  始めたのです。


  「やばい」


  「このままでは、僕が真横になった時にバスとすれ違う・・・・。
   ランクルの後部とバスの運転席がぶつかる。」


  ブレーキを踏む足は、全く意味を持たず。
  掴むハンドルは、空中を彷徨い・・・。


  僕は、諦めました。車が流れる方向へ任せる他なく。

  ダンプで鍛えた腕など何の役にも立たないことを悟り・・。
  ただ、祈りました。


  「お願いだから、ぶつからないで!」



  その時、僕のランクルは更に回転を始め、轍に戻りました。
  バスに対して、まるで後ろ向きで。


  後ろ向きで轍をすべり落ちて行くランクルと、既に危険を感じ停止
  したバスが・・・・。
  まるでスローモーションビデオでも見るようにすれ違ったのです。


  運転席から僕を見つめる制服を着た男。
  客席に乗った人々の視線、何か叫んでいる口、・・・・。
  全部目に入りました。

  その後ろでいつもの見慣れた、山並み。
  目の前を迫り過ぎた、壁のような山肌。


  バスと後ろ向きですれ違い終えた時、ランクルは止まりました。
  運転手が下りてきました。
  山肌側の運転席の僕に、


  「大丈夫だっかたぁ?いくらジープでも、こんな道チェーン
   しなけりゃだめだぁ。
  でぇも、 ぶつからんでよかったぁ・・・・・。
   この先気ぃつけてなぁ・・・。」



  なんだ、「轍」に入ったままでもぶつからなかったのです。
  接触すると思ったから、左に寄せようと思ったのに・・・。
  まるで曲芸のように、そのバスとすれ違うなんて、それもその
  轍に入ったまま・・。


  口の中は乾き、ハンドルを持った手は、冷たい汗で・・・・。
  少し震えているようでした。



  同じ轍は踏まないと思わず、
  足跡をたどったならば・・・・。

    



    「私たちの殆どが、自分の見たり聞いたりするだろうと
   予想していることを、本当にそのまま見たり聞いたり

    してしまいます。」

     =ウィン・ウエンガー、リチャード・ポー=
    「頭脳の果て」~アインシュタイン・ファクター~

  
今日も、新しいインスピレーションを
迎える、そして、迎えにゆく
1日でありますように。 (^ー^)v

そして・・・

いつも 「ありがとう」


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