"紅茶は思い出すために、
 ワインは忘れるために"
 
 
ある不思議な映画の中に、
この台詞は登場する。
 
 
そこは人生を終えた後に訪れる
此岸と彼岸のはざまのような場所。
 
 
「あなたの人生の中から大切な
 思い出をひとつだけ選んでください」
 
 
ある目的のために、7日間のうちに
思い出を選び
 
その思い出を元にして
映画が作られ、そして上映される。
 
 
 
赤ちゃんの時の記憶
夫婦で過ごした何気ない日常
満開の桜の下
学生時代、都電から感じた、風
 
それぞれに
選ばれる思い出。
 
 
 
 
記憶とは違う。
それは知っている。
 
ささやかなフィクションを織り交ぜて
その中で生きていきたいと
願う人もいる。
 
 
「本当はね、あの人
 来なかったんだよねぇ」
 
 
そう ぽつりと こぼした女性を
映画を作る側に立つ人は
静かに受け入れて
 
そして冒頭の言葉を投げかける。
 
 
「紅茶は思い出すために、
 ワインは忘れるために」
 
 
 
 
もう、何年も観ていないから
記憶もぼんやりだけれど。
 
この言葉に
なぞらえるとしたら、
 
 
「ウィスキーは
 思い出して
 味わって
 また、しまっておくために。」
 
 
 
記憶は、思い出す度に
古びて、香りを増して
醸成されていく。
 
 
だんだん薄れてゆく。
 
 
もしかしたら、とっくに
細部は思い出せなくなっていて
書き換えられているものも
あるかもしれない。
 
 
現在の自分からの
価値観や視点で
フィルターをかけて。
 
 
 
 
幸せな記憶もある。
 
そうでないものは
無理に取り出す必要はなくて
その時がきたら、きっと
ことりと音を立てて、現れる。
 
 
移ろいゆく記憶を
思い出して
味わって
また、小さな箱にしまっておく。
 
 
 
しまったまま
抱えたまま
 
これからも共にゆく。
 
 
そんな
わたしにとっての
ウィスキーの効用。
 
 
 
* * * * * * *
 
 
 
文字つづりすとの
"姐さん"こと渡邊美帆子さん

 

 

 
このブログを読んでくださり
 
「夜に、ウィスキーを
 飲みながら読みたくなる」
 
と表現してくださった。
 
 
美帆子さんの文章は
言葉が、鮮やかで豊かで
どこかお茶目でぐいぐい引き込まれる。
こんな文章を書いてみたいなぁ、と思う。
 
 
そんな言葉が嬉しくて噛みしめていたら
冒頭の台詞を思い出してしまって
今日の文章は生まれました。
 
 
記事の中で出てくる映画は
1999年に公開された
「ワンダフルライフ」という映画。
 
 
「誰も知らない」などで知られる
是枝裕和監督の2作目で、
 
俳優としては駆け出しの頃の
井浦新さんや
伊勢谷友介さん
 
亡くなられた谷啓さんも
出演されています。
 
 
もう、20年も経つけど
色褪せないどころか
年を経るごとに、
たくさんのものが見えてくる
 
そんな作品。
 
だって今も
予告編だけで泣いてしまう。
 
とても大切な映画です。
 
 
「あなたの人生の中から大切な
 思い出をひとつだけ選んでください」
 
 
 
 
 
 
 
お越しくださり、
ありがとうございました。
 
明日もあなたが笑顔でありますように。