3月末に階段で右手の指を怪我してから、1か月あまり経った。
今は普通にピアノを弾くと、翌日に小指が痛くなる。
それでも、少しずつ確実によくなってきている。
1か月以上休んでいたジャズのアンサンブルのクラスにも、そろそろ戻ろうと思っている。
もう一人のピアニストから「次はこれをやる」と教えてもらった曲の一つは、
The Saga of Harrison Crabfeather。
Steve Kuhn の曲だ。
リアルブックでは4分の3拍子で表記されていて、全部で56小節。
最初は、
「これでは自分がどこを弾いているのか見失いそうだ。ソロが取れない」
と思った。
そこで自分でテーマを耳コピしてみると、8分の6拍子に聞こえた。
途中、一回目の Ab#11 のところだけが4分の3拍子に聞こえる。
そう考えると、小節数がぐっと減る。
曲の構成も、自然に身体へ入ってきた。
さらに、iReal Proでこの曲を探したとき、最初の設定テンポがかなり遅めだったので、そのままのテンポでソロを弾いてみた。
そのとき、今朝見た夢のことを思い出した。
「胸の部分に耳があるつもりで弾く」
という感覚だ。
すると、驚くことが起こった。
ソロが、まるで変わった。
「胸の耳」で聞きながら弾くと、
――せかせかした気持ちがなくなる
――「自分の欲しい音はこれじゃない」という焦りが消える
――わけが分からないまま、勢いで弾き散らかすことがなくなる
そして、
・ソロを弾きながら、楽に息が吸える
・弾きっぱなしではなく、「待つ」ことができる
・「こう弾きたい」という感覚と、実際に鳴っている音が近づく
そんな変化があった。
もちろん、iReal Proのテンポが遅めだったことも関係していると思う。
でも、それだけではなかった。
わたしはこれまで、ピアノを弾くときに、
指、手、腕、肘、肩、姿勢、そして足が床にしっかりついていることには気を配ってきた。
けれど、特に即興演奏では、鍵盤のすぐ近くにある「胸」で聞くと、演奏が安定する。
夢の中に出てきた、「胸の耳」。
「頭」で弾こうとすると、
まるで洗濯機のボタンを押すように、脳が指へ命令を出すプロセスになる。
気が散る。
でも、「胸の耳」で聞きながら弾こうとすると、
もっと直接的に、感情が音へ伝わっていく。
もちろん、本当に胸に耳があるわけではない。でも、頭で考えて音を選ぶのではなく、
身体の中心で音を受け取る感覚、と言えば近いかもしれない。
気づくのは遅かった。
でも、気づけてよかった。