フランス人の友人の提案で、
定年退職されるわたしのついていたエクリチュールの先生を
囲んでレストランで夕食をとった。
先生には男子3人とだけでレストランで
食べると言う話になっていたが、
実際には、先生の教え子や先生の同僚がレストランで
横一列でとれる
マックスの15席、15人が集まった。
先生を驚かせようと言う計画だった。
贈る言葉をカードに書いたりプレゼントを用意した。
わたしは、フランス語をカードに書き間違えるのが嫌で
うちからメモに書いてもって行き、バラのスタンプと
真紅のスタンプ台までもって行って、カードを書いていたら、
この会を計画した男性の知人に見つけられ、
「やんぱっぱが前もって用意してきている、それはずるしだよ。」
と、からかわれたが、
「間違いたくなかったから。」
と、集中して書いた。
また、わたしの隣に座っていたのは、ここ2・3年、
いつもわたしとペアレッスンみたいに一緒に
エクリチュールのレッスンを
受けていた男性だった。彼は言った。
「わ~、日本のスタンプを持ってきているじゃないか!」
「ううん、スタンプ台は日本製だけど、
ハンコはこっちで買ったものよ。」
彼はめずらしそうに好奇心いっぱいにわたしが書くのを見ていた。
彼と初めていろんなことをいっぱい話した。
その中で彼は言った。
「2年前は、あなたは今みたいなきれいな曲を
書いていなかった。」
わたしはちょっと複雑な気持ちになった。
進歩したとほめられているんだろうけど、
同時に過去をけなされているような気がしたから。
「いや、フォーレのスタイルが好きだからじゃないの?」
わたしは答えた。
先生は席を移動され、次々に、昔の生徒の近況を
お尋ねになっていた。
わたしの席の反対の席には、以前一緒にジャズの
即興のクラスをとっていた若者が大きくなって現れた。
高校生だった彼は、前は細くて、慎重もわたしよりほんの少し
高いくらいだったのに、背もすごく伸び、体格も
立派になっていた。今はプロのドラマー・
パーカッション奏者として仕事をしているそうだ。
彼もエクリチュールの先生についていた。
わたしは、いつも、自分では
内気で、話し下手な方だと思っていたが、
この会だけは、エクリチュールの現役の弟子が、わたしと、
そのペアレッスンを受けていた男性だけということもあり、
何かこの会が、自分のファミリーの会のような打ち解けた
雰囲気のように感じ、
また、昔のジャズの即興の、息子ほど年の違いはあっても、
仲間には違いない、その若者に会えて、とてもよくしゃべった。
その時に、わたしの新しい眼鏡をかけていった。
前のメガネはと言うと、8年ほど前に作ったきりだった。
あっという間に月日が流れていた。
遠くが見えるいわゆる近視用のメガネと
今回初めて、近くが見えると言う、老眼のメガネも作った。
コーラスの伴奏の時に『あかん、見えへん、』と焦ったので
急きょ眼科に駆け込んだと言う経緯だ。
わたしが、20才の時に付き合っていた人のお母さんに
初めて会った時に、すぐに彼女が言ったことがあった。
「不二家のペコちゃんに似てる!」
うまいこと言うと、自分で鏡を見た時、思ったものだ。
その不二家のペコちゃんも今はシニアになって
肥満ではないが太り気味で、グレーヘヤになった。
ユニークな親しみやすい雰囲気が基盤にあるので、
それにシャープさを加えるちょっと斬新なデザインの
メガネを、普段かける遠くを見るためのメガネに選んだ。
同僚たちは、「すっごくいい、よく似合っている!」と
大絶賛だ。このメガネをかけていると、
なんだかみんながすごく親切にしてくれるのはなぜ?
8年もメガネを作っていなかったので、以前のものは
値段がいくらかは覚えていない。安くはなかったが、
保険も適用されていたし、べらぼうに高かった
記憶もなかったが、今回のものは、物価高の影響か、
わたしの買ったメガネの製造元が有名なところなのか、
わたしが思っていた額よりメガネがずっと高くて、
決めた時には、庶民のわたしは、うちを買ったような
気がした(笑)
わたしには高い買い物だったのだが、それだけに、
そのメガネ屋さんからメガネを買って出て行く時に
言われた言葉が、すごく印象的だった。ベテランの
年齢も相応な女性だったのだが、いつも笑顔と言うよりは
真剣にわたしの話を聞き、真剣にアドバイスをすると
言うような方だったのだが、わたしを見送る時に
彼女が真剣にこう言ったのだ。
「このメガネであなたがたくさん成功されますように!」
『え、何?メガネを手に入れたことで成功?』
今まで考えたこともないフレーズだったので愉快なハッピーな
気持ちになり、ハハッと、その時は笑顔になっただけだったが、
思いかえすとその店員さんはものすごくプロだなと思ったし、
彼女のフレーズが本当に素敵なフレーズだと思った。
そのメガネをかけるたびに思い出す彼女の言葉、
まんざら、見当違いでもないかもしれないじゃないか、
そう思い始めた。いつも一緒にいるメガネ、
遠くまで物がスキッと見えるようになり、ただ親しみがある
自然なわたしの表情にシャープさを足し、
主張があるような表情に変えるメガネだ。
成功するにしても何の成功があるかはわからないが、
もういろんな場所で会う人会う人の対応が違う。
(違う見方をすれば、今までのメガネがもう古すぎて、
小汚く見えていたのかもしれない)
今後、メガネにはまりそうな、予感がする。
さて、今日は4月末までにできるようになりたいことがあって
職場が開いていると聞いたので行ってピアノを練習してきた。
ひたすらMack the Knifeを練習していた。
朝、11時半ころついて、午後7時45分まで、あわせて
7時間半くらいお昼ご飯を食べる時間以外は練習していた。
『これ、シニアのスケジュール違うやん。健康に悪いかな』と
一瞬思ったが、必要なことだった。
長男に連絡すると練習している音楽学校は違えど、
彼もバイオリンの猛練習中だった。
この親にしてこの子ありとは、よく言ったものだ。