日本語を話せない、書けない、聞き取れない夫は、英語で
コミュニケーションをとって仕事をしていた。日本語教室にも週に
何回か職場から通わせてもらったが、身につかなかった。
夫は、ある日、お呼ばれの席で、ちょっと知っているフレーズを
使ってみた。夫は、わたしと帰ろうとしていた。
「失礼です。」みんな一瞬しんとした。何のことかわからなかった。
わたしが助け舟を出した。「失礼しますって言いたかったのね。
失礼ですって言ったら、相手の言ったことや していることが
自分には失礼に当たります、と言っている事になっちゃうよ。」夫の
同僚の中でも気さくな人たちばかりの会でよかった。
外国に住むストレスか、契約期間が終わったら、どこに行くか
わからない状況のせいか、日本という物価が高い国のせいか、
自分でまとまったお金を稼ぐようになった夫は経済観念に対する
厳しさが出てきた。究極の節約を試みた、ようにわたしには見えた。
結婚前に付き合っていたとき、学生結婚をして、生活費を分け
合っていた時には、物を買うときも話しあえて、何の問題も
なかった夫が急変した。結婚するまで4年付き合ったが、わたしに
声を荒げたことは一度しかなかった。その一度とは・・・。
ある日、わたしの尊敬する音楽家がチャリティコンサートを開いた。
わたしはそのコンサートを聴きに行った。夫はその音楽家を批難した。
チャリティ資金のあて先が気に入らないと言った。収益金は家が
貧しくて、バカンスに出かけたことのないこどもたちに、バカンスに
旅立つ機会を与えるアソシエーションに寄付されるというものだった。
(続く)