リウマチ

※写真はリウマチのイメージです。

診断や治療が難しいといわれていた膠原病ですが、早期に受診し、治療を始めれば、症状を抑えることが可能です。特に関節リウマチの治療の進歩は目覚ましく、寛解(症状が治まっている状態)を目標にできるようになっています。

膠原病ってどんな病気?

膠原病とは、一つの病気の名前ではなく、共通する特徴を七つだ複数の病気の総称です。共通する特徴とは、血管や結合組織に炎症が起こり、それによって体のあちらこちらにさまざまな症状が引き起こされていることです。

結合組織は、主に膠原線維(コラーゲン)からできています。体の細胞と細胞は、この膠原線維によって結び付けられ、内臓、血管、関節、皮膚など、体の各部が形づくられています。

膠原病という名前は、この「膠原」という言葉に由来しています。結合組織を走っている血管の外側や内側に炎症が起こると、血流の低下や、にじみ出しを生じ、内臓や皮膚、関節などにさまざまな症状が現れるようになります。血管は全身にあるので、血管の炎症は全身のどこにでも現れる可能性があります。いずれかの臓器に、また複数の臓器に同時に、あるいは次々と現れる可能性もあります。

膠原病には、一般によく知られている関節リウマチのほか、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群などの病気が含まれます。患者数は、関節リウマチが最も多く50万~80万人程度と推定されていますが、そのほかの膠原病の頻度は高くなく、以上のほとんどが女性に多いのが特徴の一つです。

膠原病の原因

いずれの病気も原因ははっきりわかっていませんが、自己免疫疾患であることがわかっています。自己免疫とは、本来は異物を排除して体を守る免疫の働きに異常が起こり、自分の体内の組織を損傷してしまう状態を指します。白血球が起こす炎症が損傷の原因ですが、自分の組織を排除することはできないため、白血球の働きは止まらず、炎症が長く続いてしまいます。 免疫異常が起こる理由はわかっていませんが、体質や素因にさまざまな環境誘因が重なることが関係していると考えられており、現在、世界中で研究が進められているところです。

膠原病のこのような症状に注意

病気の種類によって、症状が起こる部位や現れ方はさまざまですが、関節の症状など、多くの病気に共通して見られる症状もあります。痛み、腫れ、こわばりなどの関節の症状発疹、また、全身性エリテマトーデスでは、両頬にできる蝶が羽を広げたような形の蝶形紅斑多発性筋炎では、筋力の低下など、病気によって特徴的な症状が起こることもあります。 以下に主な病気によって特徴的を記載します。

関節リウマチ(略称:RA)

関節の炎症による腫れや痛みが起こる(左右対称)。約50~80万人。30~50歳代に起こりやすい。

全身性エリテマトーデス(略称:SLE)

発熱、全身倦怠感、関節。皮膚、内臓などのさまざまな症状が一度に。あるいは次々に起こる。 腎障害が知られているが、障害を受ける臓器や数は人によって異なる。皮膚症状では。紅斑が特徴的。紫外線に過敏になることがある。約6万人(特定疾患申請数)。20~30歳代を中心に妊娠可能年齢に起こりやすい。

多発性筋炎・皮膚筋炎

筋肉に炎症が起こり、筋力が低下する。加えて、皮膚症状(まぶたの紅斑など)があれば皮膚筋炎。発熱することもある。筋肉に炎症が起こり、筋力が低下する。約1.5~2万人(特定疾患申請数)。10~50歳代に起こりやすい。

強皮症(全身性強皮症)

皮膚や内臓の硬化、線維化、レイノー症状、関節の痛みや腫れなど。症状の現れ方は均一ではなく、重症になることもあれば、自然に軽決することもある。治療は、ステロイド薬は使わず対症療法を行う。約1.5万人(特定疾患申請数)。30~50歳代に起こりやすい。

膠原病に現れやすい症状

関節の症状

  • 痛み
  • 腫れ
  • こわばり

関節の症状は、関節リウマチきはじめ、多くの膠原病に共通する症状。膠原病以外の病気でも起こるが、左右対称の症状が続けば関節リウマチ、変動性ならほかの膠原病の可能性がある。

皮膚の症状

  • 発疹
  • レイノー症状
  • 皮膚の硬化

膠原病では皮膚にさまざまな発疹が現れる。かゆみはないことが多い。全身性エリテマトーデスでは両方の頬に現れる蝶形紅斑、皮膚筋炎ではまぶたに現 れる紅斑など、病気によって特徴的な発疹が現れることがある。手の指先が白から紫に変色し、赤くなって元に戻るレイノー症状は、全身性エリテマトーデス.強皮症、そのほかの膠原病、皮膚の硬化は強皮症で起きる。

筋肉の症状

  • 筋力の低下
  • 筋肉痛

筋肉の症状は。多発性筋炎・皮膚筋炎で起こりやすいが、ほかの病気でも起こることがある。また。筋力の低下がじわじわ進むと見過ごしやすい。筋肉痛 も日常的に運動などで起こりがちなので、病気と思いにくい。

全身症状

  • 発熱
  • 体重減少
  • リンパ節の腫れ

これらのほとんどは感染症の症状であるが、膠原病でも起きるので、検査で鑑別することが必要になる。

受診するとき

膠原病では、人によってさまざまな症状が現れるため、受診のきっかけとなる症状も患者さんごとに異なります。膠原病を疑っていない場合、関節に痛み が起これは整形外科発疹が起これは皮膚科、目がごろごろすれば眼科を受診するかもしれません。最初はどの診療科を受診してもかまいません。気になる症状がある場合は、かかりっけ医を受診し、膠原病であれば、病状に合った専門医を紹介してもらうのかよいでしょう。また、初めからリウマチ科や膠原病科を受診する方法もあります。膠原病の専門医(日本リウマチ学会のリウマチ専門医、日本リウマチ財団のリウマチ登録医)は、下記のサイトで検索することができます。膠原病は、初期の治療がその後の経過を左右するため、膠原病とわかったら、できるだけ早く専門医の下で治療を始めることが大切です。

リウマチ情報センター http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/

サイトから「専門医療機関について」⇒「財団登録医の所属する医療機関」を検索できる。

日本リウマチ学会 https://www.ryumachi-jp.com/

サイトから「リウマチ専門医・指導医名簿」⇒「医師名・施設名・地域名から検索」で、日本リウマチ学会の登録医を検索できる。

膠原病の検査と治療

主な膠原病の検査

検査の前に。診察によって、全身の状態を調べます。 問診では、家族歴、既往歴、気になる症状などをきちんと医師に伝えます。検査のなかで重要なのは、血液検査です。血液検査により炎症の有無や活動性(赤沈, CRP、血球成分)。自己抗体の有無(抗核抗体。リウマトイド因子、抗CCP抗体。抗DNA抗体など)を調べます。ほかに必要に応じて尿検査、画像検査、生理機能検査(心電図、脳波、筋電図)、生倹体液検査(関節液、胸水や腹水)などが行われることがあります。 膠原病のなかでも。どの病気かをきちんと診断することが大切です。

主な治療法

病気によって異なる場合がありますが、治療の基本は薬物療法です。関節リウマチと強皮症以外の膠原病では。第1選択はステロイド薬です。現在では。ス テロイド薬の適正な使い方が普及し、多くの膠原病で。寛解が望めるようになり。命に関わるような状況も激減しています。ただし、寛解に至っても、その状態を維持するために、治療を続ける必要があります。自己判断で薬を中断したり減量したりすると、再発や悪化の危険があるため、医師の指示どおリ薬の服用を続けてください。なお、ステロイド薬は、効果の高い薬ですが、糖質や脂質の代謝、骨への悪影響などの副作用があります。糖尿病、脂質異常症、腎臓病などの持病がある場合は、持病への悪影響が考えられるので、持病の治療を強化するなどの対策が必要になります。効果と副作用のバランスをとるのが、ステロイド薬を上手に使うポイントです。ステロイド薬以外の治療では、免疫抑制薬や生物学的製剤を使ったり、血漿(けっしよう)浄化法などが行われることもあります。