12月1日


師走。身を切る寒さ。関東地方でも初雪が降ったところがあるらしい。


『オデュッセイアー』も第二十三歌に入る。その冒頭。


γρηῢς δ᾽ εἰς ὑπερῷ᾽ ἀνεβήσετο καγχαλόωσα,
δεσποίν
ῃ ἐρέουσα φίλον πόσιν ἔνδον ἐόντα: (23-1,2)

老乳母はからからと笑いながら階上に上がっていった

奥方に愛しいご主人が帰館なさっていると伝えようと


γούνατα δ᾽ ἐρρώσαντο, πόδες δ᾽ ὑπερικταίνοντο.
στ
ῆ δ᾽ ἄρ᾽ ὑπὲρ κεφαλῆς καί μιν πρὸς μῦθον ἔειπεν: (23-3,4)

膝は動いた、足はよろめいた

そして(奥方の)枕元に立ち彼女に声をかけて言った


老乳母エウリュクレイアは、オデュッセウスの乳母だったのだから、かなりの高齢だろう。その老婆が「からからと笑いながらκαγχαλόωσα」階段を駆け上がる。

3行目のὑπερικταίνοντοはhapax(唯一例)で、その語義は「急がせる、伸ばす、跳ねさせる」などと推測されているものの必ずしも明確でない。しかし、

γούνατα δ᾽ ἐρρώσαντο, πόδες δ᾽ ὑπερικταίνοντο

[ gûnata d’errôsanto, podes d’ huperiktainonto ]

膝は動いた、足はよろめいた

という対句的詩行の語調からは、老体を顧みず、よろめきつつも喜び勇んで駆け上がろうとする姿が浮かんでくるようだ。枕元では息を切らして報告したのだろう。