12月2日
老乳母はペーネロペイアにオデュッセウスが帰館し、求婚者達を誅殺したことを伝える。
続く数十行では、それを聞いたペーネロペイアの揺れる心の動きが語られる。その動きとは、不信と怒り、一時の信と喜び、そして再びの懐疑だ。
まず不信と怒り。
τίπτε με λωβεύεις πολυπενθέα θυμὸν ἔχουσαν
ταῦτα παρὲξ ἐρέουσα καὶ ἐξ ὕπνου μ᾽ ἀνεγείρεις (23-15,6)
なぜ心に悲痛を抱えている私をからかうのです
そんなでたらめを言って、眠っている私を起こしてまで
「からかう」と訳したλωβεύειςは強い言葉だ。文脈からは一寸馴染まないが「侮辱する」とした方がいいくらいだ。
そんなことを言うのがお前以外の女だったら直ぐにも厳しく追い返すところです、「お前は老いてるが故にその点で救われているのだよσὲ δὲ τοῦτό γε γῆρας ὀνήσει(23-24)」と怒りを示す。
そこで老乳母は改めて、あの客人がほかならぬオデュッセウスで、それはテーレマコスも知っていたが隠していたのですと話す。すると、信と喜びがペーネロペイアを捉える。臥所から飛び起き、乳母に抱きつき涙を流し、どのように求婚者達を斃したのかを問う。老乳母は、私たちは奥にいて音だけを聞いた、広間に戻ったときには誅殺は終わっていたと応える。すると、再び懐疑がペーネロペイアを捉える。
昨晩テレビで興味深いものを見た。大体バライティー番組というのは苦手で余り見ないのだが、スポーツ選手が出ている場合は別で、その時は結構面白い。昨日はアーチェリーの選手が竹輪の穴を射貫くところをやっていた。
この選手は、先日ロンドンオリンピックのアーチェリー女子団体で銅メダルを取った三人組の一人だ。三十メートルの距離で見事射貫いた。竹輪の穴は直径約1センチ。
そこで想起されるのは他ならぬ『オデュッセイアー』の弓競技のことだ。
この弓競技について触れた時、「信じがたい超人技で、ひとつの英雄伝説だろう」と記した(11月5日の項)。しかし、昨日の女子選手の技を見てあながち大袈裟な作り話ではないのではないかと思い返した。