12月17日

いよいよ第24歌に入る、最終歌だ。

求婚者達の亡霊をヘルメイアース神が冥界へと導いていく。その亡霊達の様子を比喩で語る。

ὡς δ᾽ ὅτε νυκτερίδες μυχῷ ἄντρου θεσπεσίοιο
τρίζουσαι ποτέονται,
ἐπεί κέ τις ἀποπέσῃσιν (24-6,7)

あたかも不気味な洞窟の中で蝙蝠達が

小さく啼きながら飛び交う如くに、一羽が落ちた時に


  ὁρμαθοῦ ἐκ πέτρης, ἀνά τ᾽ ἀλλήλῃσιν ἔχονται,
  ὣς αἱ τετριγυῖαι ἅμ᾽ ἤϊσαν:  ・・・ (24-8,9)

列の(一羽が)岩から、連なってつかまっていたところを(落ちた時に)

その如くに(亡霊達は)小さく叫びながら進んでいった ・・・

「蝙蝠νυκτερίδες」登場。これは又不気味にして真に迫る比喩だ。「落ちた時に/列の(一羽が)岩からἀποπέσῃσιν/ὁρμαθοῦ ἐκ πέτρης」など、まのあたりにするようだ。

昨夜から今日にかけてテレビでひっきりなしに登場している某党の幹事長がいる。幹事長職よりも、ヤクザの親分やマフィアの頭目により相応しい目つきだ。

ところでホメーロス愛用の成句にὑπόδρα ἰδὼνがある。例えば『オデュッセイアー』第二十二歌で、オデュッセウスが弓を手に求婚者達に最後通告するときはこういう詩行になっていた。

τοὺς δ᾽ ἄρ᾽ ὑπόδρα ἰδὼν προσέφη πολύμητις Ὀδυσσεύς: (22-34)

彼らをὑπόδρα ἰδὼν策略に長けたオデュッセウスは言った

このὑπόδρα ἰδὼνは「上目遣いに睨んで」とか「ぐっと睨みつけて」とか訳されるが、ὑπόがあるから「下から睨んで」とでもするのが近いのだろう。

先日、ホメーロスを読む会でメンバーからὑπόδρα ἰδὼνの詩句について、「そういえば大政党幹部にそういう人がいたな」との指摘があり、一同爆笑したことだった。辞書のこの成句のところには、この人の顔のイラストを山藤章二にでも描いてもらって入れたら理解に大いに資することだろう。