12月5日
テーレマコスは「何故もっと語りかけないのか」とペーネロペイアを咎める。それに対して彼女は、「もし本当にこの人がオデュッセウスなら」といってこう続ける。
γνωσόμεθ᾽ ἀλλήλων καὶ λώϊον: ἔστι γὰρ ἡμῖν
σήμαθ᾽, ἃ δὴ καὶ νῶϊ κεκρυμμένα ἴδμεν ἀπ᾽ ἄλλων.(23-109,10)
私達はお互いよりよく確認することが出来ましょう、何故なら私達にはあるのですから
印が。私達だけが知っている他人からは隠された印が
ここで最終的な認知の手段「印σήμαθ᾽」が予告される。それが具体的に何を指すかはまだ示されない。後のお楽しみだ。
そして、
ὣς φάτο, μείδησεν δὲ πολύτλας δῖος Ὀδυσσεύς, (23-111)
彼女はこう言った、忍耐強いオデュッセウスは微笑んだ
オデュッセウスは、夫婦だけの秘密を以て試そうとしている妻を見て「微笑む」。オデュッセウスは自ら試すことは勿論、吾妻が試すことも喜ぶ。根っから試すことが好きなのだ。
堀田善衛のスペイン滞在日記を読んでいる。今日読んだ一節には思わず笑わされた。
彼の地の日本古典文学の碩学が、自分の奥さんと約束があるという由を「今晩はチギリを結んでますから」と言ったという。また、窓がひとりでに開いた時「窓がオノズカラあきました」とも。
おそらく似たような話は探せば沢山あるのだろう。これは誰に聞いたのか、やはり青い目の日本古典文学の大先生が日本の学者の家に招かれて、そこの奥さんを「コレ、女房」と呼んだ、と。