11月29日
テーレマコスは柱に綱を結びつけ不義不忠の女達十二人を吊し、首を絞めて殺す。
ὡς δ᾽ ὅτ᾽ ἂν ἢ κίχλαι τανυσίπτεροι ἠὲ πέλειαι
ἕρκει ἐνιπλήξωσι, τό θ᾽ ἑστήκῃ ἐνὶ θάμνῳ, (22-468,9)
あたかも翼長き鶫か鳩が
茂みに仕掛けてあった網にかかる如くに、
αὖλιν ἐσιέμεναι, στυγερὸς δ᾽ ὑπεδέξατο κοῖτος, (22-470)
塒へと行くところを(掛かる如くに)、疎ましい臥所が迎え入れるのだ
「疎ましい臥所が迎え入れるのだστυγερὸς δ᾽ ὑπεδέξατο κοῖτος」とは皮肉だ。
そして女達は
ἤσπαιρον δὲ πόδεσσι μίνυνθά περ οὔ τι μάλα δήν. (22-470)
しばし足で藻掻いたがそれも大して長くはなかった
無抵抗の女達をそこまでするのは無慚に過ぎないか、罪一等を減じて追放か重労働ぐらいでも、と正直思う。しかしホメーロス世界は人間の高貴さの極致が描かれる反面、残酷さの極致も描かれる。アキレウスも例外ではなかった。怒りにまかせてとはいえ、ヘクトールの遺体を戦車につなげて引きずり回したし、捕虜の若者達をパトロクロスを弔う為に火にくべたのだった。そういえばその時の若者達も十二人だった。女達の十二人との符合は何かを示唆しているのだろうか。
『ギルガメシュ叙事詩』を読む。矢島文夫訳、山本書店。前から気になっていたのだが読む機会がなかった。面白くて一気に読んだ。
第一の書板冒頭「全てを国の果てまで見たる人、全てを味わい、全てを知りたる人」はいかにも叙事詩の語り出しだ。第六の書板末尾の「我が友よ、大神たちはなぜ会議をしているのか」、これなど太古の声が聞こえてくるようだ。
成立は紀元前二千年とも三千年とも言われているからホメーロスより遥か前ということになる。惜しむらくは残欠が多く、韻律も不明なことだ。