11月18日


残る求婚者達は館脱出の可能性を探るが、出口は


καί χ᾽ εἷς πάντας ἐρύκοι ἀνήρ, ὅς τ᾽ ἄλκιμος εἴη.

一人の男でも、それが強い奴なら皆を防ぐことが出来る


といった位置にあり、諦める。戦いにおいては時としてそういう場所、そういう地形がある。そこで、武器を執って戦おうとして例の牛飼メランテウスが武具を納戸から運んで来る。

さて、敵が鎧ったのを見てさすがのオデュッセウスもたじろぐ。そこでテーレマコスは言う。


ὦ πάτερ, αὐτὸς ἐγὼ τόδε γ᾽ ἤμβροτον—οὐδέ τις ἄλλος

αἴτιος—ὃς θαλάμοιο θύρην πυκινῶς ἀραρυῖαν (22-154,5)
おお、父よ、それは私自身の失策でした、他の誰の

咎でもありません、私は確り閉まる扉を


κάλλιπον ἀγκλίνας: τῶν δὲ σκοπὸς ἦεν ἀμείνων. (22-156)

開けたままにしておいたのです、敵の目が一枚上手でした


テーレマコスの率直さが出ている。「私自身の失策でしたαὐτὸς ἐγὼ ἤμβροτον」と認めている。ホメーロスの詩編で他人ではなく自分が「αἴτιος(咎がある)」と認めた例が他にあったろうか。アガメムノーンにいたっては、自らのアキレウスに対する横暴な振る舞いについてこう言っていた。

・・・  ἐγὼ δ᾽ οὐκ αἴτιός εἰμι,
ἀλλὰ Ζεὺς καὶ Μοῖρα καὶ ἠεροφοῖτις Ἐρινύς, (19-86,7)

・・・ 私に咎はない

(咎があるのは)ゼウスであり、運命の女神であり闇を彷徨う復讐の女神だ


 ギリシアには一度行ったことがあるが、もう一度行ってみたい。特にイタケーとクレタだ。前者は勿論オデュッセウスの故郷であり、この詩編の主な舞台だ。後者クレタはオデュッセウスが作り話でよく出身地としていたところだ。それに「フェストスの円盤」とか「吟遊詩人像」とかの出土品がある。それらを肉眼で見てみたいものだ。