10月29日


 求婚者の一人クテーシッポスは、贈り物だと言って老人に牛の足をぶつけようとする。


ὣς εἰπὼν ἔρριψε βοὸς πόδα χειρὶ παχείῃ.
κείμενον
ἐκ κανέοιο λαβών: ὁ δ᾽ ἀλεύατ᾽ Ὀδυσσεὺς (20-299,300)

そのように言って頑丈な手で牛の脚を投げた

駕籠の中にあったのをつかんで。オデュッセウスはよけた


ἦκα παρακλίνας κεφαλήν, μείδησε δὲ θυμῷ
σαρδάνιον μάλα το
ῖον: ὁ δ᾽ εὔδμητον βάλε τοῖχον. (20-301,2)

軽く頭を傾けて、心で笑った

いかにも凄みのある笑みで。それ(牛の脚)は造りよき壁に当たった


「凄みのある笑みで」と訳した原語はσαρδάνιον。これはホメーロスではここだけに使われている単語で、古川辞書では「冷ややかな、とげのある」の訳語が与えられている。その語源については植物名起源説、地名起源説、σαίρω(歯軋りする)と関連づける説等々入り乱れ不明だが、英語のsardonicやフランス語のsardonique(意地悪な、冷たい)のもとになった言葉だ。

それでこの場面だが、「オデュッセウスがσαρδάνιονな笑みで笑った」とは何とも不気味だ。一瞬オデュッセウスが悪魔的表情を見せたようにも思える。


今日は、空気が澄んでいたせいか、夕刻富士山のシルエットがくっきりと見えた。富士山は家の近くから真西に見える。天気がいいと日没時には背中に夕陽をしょって黒く浮き出るのだ。たまたま飛行機が後ろに飛行雲を描きながら飛んでいた。飛行雲は普通は白いのだが今日見たときは、そこはまだ暮れていないのだろう、夕陽を浴びて赤かった。